タイトル |
汽水域生態系における水際域の役割と管理手法の開発 |
担当機関 |
独立行政法人水産総合研究センター水産工学研究所 |
研究期間 |
2002~2004 |
研究担当者 |
桑原久実
|
発行年度 |
2005 |
背景・ねらい |
汽水域の浅場に生息する底生系の動植物は、水域の富栄養化を緩和する効果のあることが知られている。付着珪藻などの底生植物は堆積物から溶出する栄養塩を吸収し,シジミは浮遊している懸濁物の除去効果がある。埋め立て等による浅場の喪失は,生態系に重大な影響を与えものと考えられる.本課題は、汽水域生態系における浅場の機能について定量的な評価を行い,適切な造成方法や管理手法を確立することにある。
|
成果の内容・特徴 |
- 水質、底質及び水中動植物に関する生態系モデルの構築:
水質モデル: 太陽放射による鉛直1次元熱輸送方程式を用いて各層の水温が求まり、この水温と塩分による密度勾配から鉛直拡散係数が求まる。有機態のコンパートメントは植物プランクトン、動物プランクトン、懸濁態有機物(POM)の3種である。 底質モデル: 底質は、好気層と嫌気層を考慮し、沈降、混合、拡散、埋没が行われる。底質で無機化された栄養塩は、水中に溶出し、再び、水質モデルに入り植物プランクトンに取り込まれる。
- チャンバー実験によるモデルの検証:
生態系モデルを用いて、チャンバー実験と同条件で数値計算を実施した。DO、NH4、NO3、PO4濃度の変化は、実験値と計算値で比較的良い一致が示された。 - 計算結果の概要:
浅い2mの場合、光が底質表面に到達し付着藻類の生育が見られる。この付着藻類が、底質からの栄養塩の溶出を吸収し、水中のNH4,NO3,PO4は低く、DOは底層ででも高く保たれた。深い4mの場合は、通年、光が海底に達しないため底生珪藻は生育できない。このため底質からの栄養塩の溶出、酸素要求を制御できないため、特に、夏場、水中のNH4,NO3,PO4は高く富栄養化し、底層は貧酸素化が生じている。また、シジミの効果についても検討した結果、シジミは植物プランクトンやPOCを濾水し底質表層の有機物に変えるため水中の濁度は減少し、水中は富栄養化しないことがわかった。
|
成果の活用面・留意点 |
本研究で開発した生態系モデルを用い、底生藻類やベントスの影響を定量的に明らかにすることができる。
|
図表1 |
 |
図表2 |
 |
図表3 |
 |
カテゴリ |
輸送
|