タイトル |
飼育試験によるトゲクリガニの麻痺性貝毒成分蓄積および排出過程の把握 |
担当機関 |
独立行政法人水産総合研究センター中央水産研究所 |
研究期間 |
2001~2001 |
研究担当者 |
及川寛
矢野豊
里見正隆
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発行年度 |
2005 |
背景・ねらい |
これまで、麻痺性貝毒発生海域におけるトゲクリガニの毒化を明らかにしてきたが、天然海域で採取したトゲクリガニの毒量には大きな個体差があり、また、有毒プランクトンが終息する時期にトゲクリガニの捕獲が困難なため、毒化過程や減毒過程について定量的な検討が出来なかった。本課題は、水槽内で飼育するトゲクリガニに対し、毒化したムラサキイガイを給餌し、トゲクリガニの毒化および減毒過程を調べた。
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成果の内容・特徴 |
- トゲクリガニ肝膵臓中の総毒量はムラサキイガイの摂食量に比例して増加し(図1)、摂取した毒量の3割程度を蓄積することが明らかとなった。
- 毒化餌料の摂食量と蓄積毒量の関係は相関の高い直線で表されることから(図1)、トゲクリガニの毒成分蓄積能力には大きな個体差がないことが示唆され、天然海域では、毒化餌料の種類や量が個体により異なることが毒量の個体差の原因と推測された。
- 給餌に用いたムラサキイガイの毒量は規制値である4.0MU/gであったが、それを摂食したトゲクリガニの肝膵臓の毒量は20日間で12.8MU/g(平均値)となり、二枚貝の毒量が低い場合でも、トゲクリガニでは規制値を越える可能性が示された。
- 減毒5日間および10日間の試験区では、ともに当初の毒量に比べ5割前後まで減毒したことから、減毒期間の初期に大きな毒量の減少が起こることが示された。
- 減毒を20日間まで行った場合には、肝膵臓中の総毒量は当初の14.6±9.0%まで有意に減少したことから、減毒期間の後半にも徐々に毒性が低下すると考えられ、トゲクリガニの減毒過程は二枚貝と同様に二相的な特徴を示すことが明らかとなった。
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成果の活用面・留意点 |
- 一連の研究成果をもとに、2004年4月には二枚貝を捕食する生物についてPSPの基準値が定められ、トゲクリガニを含めモニタリングをする必要が生じている。本課題の成果は、効率的なモニタリングを行う上で基礎的なデータを提供するものと考える。
- 規制値が定められた後に宮城県で行われた調査でも新たにトゲクリガニに毒化が認められており、さらに広範な調査が必要である。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
くり
モニタリング
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