魚が湧く田んぼの新たなかたち(排水路−水田間の落差の一時的な解消)

タイトル 魚が湧く田んぼの新たなかたち(排水路−水田間の落差の一時的な解消)
担当機関 滋賀県水産試験場
研究期間 2004~2004
研究担当者 上野世司(水産試験場)
田中茂穂
數野幾久(農村整備課)
端憲二(独立行政法人農業工学研究所)
発行年度 2005
背景・ねらい 近年フナ類などの魚類繁殖の場として、水田の重要性が注目されている。かつて琵琶湖沿岸の水田地帯は、灌漑時や増水時に田面と排水路間に落差がなくなり、フナ類やナマズなどが産卵のために遡上し、重要な産卵・成育場のひとつであった。しかし、ほ場整備後は排水路-水田間に大きな落差が生じ、魚類の遡上を妨げている。
そこで、水田の「魚のゆりかご」としての機能を回復させるために、必要なときにだけ排水路-水田間の落差を解消する新たな手法の開発に取り組んだ。
成果の内容・特徴 米原市長沢および彦根市石寺の2地区において、既設の農業支線排水路に堰を複数連ねた階段型の魚道を設置した(図1)。魚道はアーム天端まで堰上げする「排水路堰上げ工」と、アーム天端から田面高まで堰上げする「全面魚道施設」で構成した。堰板(止水板)の付け外しにより、排水路の水位を容易に調整できる構造とした。田植え後から中干し期までの間(必要に応じて)、堰により水位を田面の高さに管理し、排水路-水田間の落差をほぼ解消した。
降雨により排水路にまとまった出水がみられると、ニゴロブナ、ギンブナ、コイ、タモロコ、ナマズ、ドジョウの各成魚が堰を遡上し(図2)、さらに水田へも進入した。これら魚種のうち、コイを除いて水田内で産卵・ふ化がみられた。また、排水路でふ化した仔魚(主としてフナ類)の水田への侵入もみられた。仔稚魚は、田植えから中干しまでの一ヶ月で体長約20mmに成長した。中干しの落水時には、長沢地区では水田5筆で約77,000尾、石寺地区では水田7筆と水路内で約48,000尾のフナ類やナマズ等の稚魚が流下した(表1)。魚道施設の工事費は1地区あたり50万円以下であった。
成果の活用面・留意点 当手法によって排水路-水田間の落差が解消されることから、琵琶湖沿岸の水田地帯をフナ類・ナマズ・コイなどの産卵場や成育場として活用することにより、それらの魚類の資源回復および内水面漁業の振興に寄与することが期待される。また節水効果や濁水抑制効果があるため、環境負荷の軽減が期待される。今後は、その効果の検証や適地の選定等が必要と考える。
図表1 229776-1.jpg
図表2 229776-2.jpg
図表3 229776-3.gif
カテゴリ 水田 繁殖性改善 ゆり

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