タイトル |
群馬県で発生したコイヘルペスウイルス病 |
担当機関 |
群馬県水産試験場 |
研究期間 |
2004~2004 |
研究担当者 |
信澤邦宏
泉庄太郎
鈴木究真
鈴木紘子
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発行年度 |
2005 |
背景・ねらい |
2003年に茨城県霞ヶ浦で初めて発生したKHV病は群馬県でも2004年4月に初確認され、その後、養殖場や天然河川での発生が続きコイ産業に多大な被害を与えている。そこで今後のKHV病対策に資することを目的として、分子疫学的解析により群馬県で発生したコイヘルペスウイルス病の由来を推測し、また、KHV病罹患コイの病理組織学的観察によりKHV病の発症から死亡に至るメカニズムについて解析を行う。
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成果の内容・特徴 |
- 分子疫学的解析 -KHVのDNAポリメラーゼ遺伝子領域とエンベロープ蛋白領域に特異的なプライマーをそれぞれ設計し468bpと459bpのPCR産物を増幅し塩基配列を比較した(図1)。その結果、この二つの遺伝子領域においては群馬、霞ヶ浦、アメリカ、イスラエルのKHVの間に変異は見られず、群馬県で確認されたKHVはその他の地域で発生したKHV病のKHVと同じものであり、全国的な発生時期も考慮に入れると群馬県で発生したKHV病は他の地域から持ち込まれた可能性が高いと考えられた。
- 病理組織学的観察 -KHV病罹患コイには鰓弁棍棒化・鰓上皮増生といった病変が観察され、免疫組織学的染色によるとKHVは二次鰓弁の末端上皮細胞や二次鰓弁基部の一次鰓弁上皮細胞に局在した(図2)。脳の視床部位にグリア結節や空胞化の非化膿性脳炎特異的症状が見られ、脳障害が起きているという新知見が得られた(図3)。また、肝臓、腎臓、脾臓、腸管においては循環白血球がKHV陽性反応を呈した(図4)。これらから、KHVは鰓上皮細胞に過度の増生や壊死などの鰓病変を起こし、そこから循環白血球に取り込まれてコイの全身を循環、視床部位で非化膿性脳炎を起こし、この鰓と脳の致命的な病変によって、多くのKHV病罹患コイが死に至るというKHV病の発症メカニズムが推察された。今後は感染試験による病態の再現実験を行い、この発症仮説の検討が必要であると思われる。
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成果の活用面・留意点 |
これらの知見を基にKHV病被害の低減を目指した試験研究を進めていく必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
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