タイトル |
キジハタの種苗生産技術開発 |
担当機関 |
山口県水産研究センター |
研究期間 |
2003~2005 |
研究担当者 |
南部智秀
山本健也
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発行年度 |
2006 |
要約 |
キジハタの種苗生産においては、ふ化から10日齢までの初期における大量減耗が問題になっている。開口直後に可食サイズのワムシを十分に摂餌させるための環境について改良を行った。併せて、中期以降(11日齢以降)の減耗要因として考えられた蝟集を防止することで、ふ化からとりあげまでの生残率が前年に比べ大きく向上した。
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背景・ねらい |
キジハタは高値で取引されることから県内漁業者からの資源増大要望が非常に強い魚種である。しかし、全国的にも本種の種苗生産は難しく、本県においても未だ安定的な大量生産技術が確立されているとは言えない状況にある。 そこで、種苗生産において最も大きな問題となっている初期の大量減耗対策については、開口直後に確実に摂餌させること、また、中期(11日齢以降)の減耗対策については棘の絡み合い及びスレの原因となる蝟集を軽減させることに重点を置き、ふ化からとりあげまでの生残率の向上を目的として試験を行った。
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成果の内容・特徴 |
- 平成17年7月上旬より、1ton及び3ton水槽を使用して試験を実施した。キジハタふ化仔魚の飼育水内で、餌として与えたワムシを増殖させ、初期餌料に適したサイズの仔虫密度を高めるため、飼育水への微細藻類添加量、添加回数を増加させた。微細藻類には濃縮ナンノクロロプシス又は濃縮淡水クロレラを使用し、ポンプにより12回/日の添加を行うことで飼育水が50万~100万cells/mlの濃度を維持するようにした。また、開口時に容易に餌を視認できるように開口日においては24時間、その後10日齢までは日中のみ人工照明を使用し照度を高めた。その結果、高照度区においては活発な摂餌が確認され、10日齢での初期生残率は低照度区に比べ高くなった(表1)。
- 中期以降については遮光幕を使用して常時1,000lux以下になるよう照度を低めに調整し、飼育水が50万~100万cells/mlの濃度を維持するよう微細藻類を30日齢まで添加した。また、仔魚の蝟集場所に応じて通気場所及び通気量を随時変更することで蝟集を散らせた。その結果、蝟集対策を全く実施しなかった昨年度の飼育例と比べ、中期以降(11日齢~とりあげまで)の生残率は向上した(図1)。
- これらの飼育方法により全長約22mmの稚魚17,567尾(生残率8.1%)を生産することができた。また、水槽1tonあたりの生産尾数は937尾という好成績であった(表2)。
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成果の活用面・留意点 |
- 小型水槽(1ton、3ton)しか所有しない当施設においても水槽1tonあたり約1,000尾(全長約22mm)の生産が達成できたことで、放流調査用種苗約12,000尾(全長約8cm)を生産することができた。
- 今後、大型水槽を用いての量産化試験へ向けて基礎的知見が確認された。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
シカ
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