早春の植物プランクトン量から翌年春季のツノナシオキアミ量を予測する

タイトル 早春の植物プランクトン量から翌年春季のツノナシオキアミ量を予測する
担当機関 独立行政法人水産総合研究センター日本海区水産研究所
研究期間 2005~2006
研究担当者 森本晴之
井口直樹(日本海海洋環境部) 
発行年度 2006
背景・ねらい
日本海,特に北部海域では, ツノナシオキアミは底魚類の春季における重要な餌であり,その現存量変動は,底魚類の生産力に影響すると考えられる。そこで,底魚類の生産力変動機構解明の一環として, ツノナシオキアミの現存量の経年変動を把握し,本種が植物プランクトンを主たる餌とすることから海域のクロロフィル量との関係を検討して,春季におけるツノナシオキアミ現存量の予測手法を開発することを目的とした。

成果の内容・特徴 重要な底曳網漁場である新潟沖の粟島西(AW),姫埼沖(E),弾埼沖(HZ)及び瓢箪礁(HE) (図1)において,2001~2005年の2月下旬,4月下旬,9月上旬及び12月上旬に計19回のツノナシオキアミの採集調査を実施したところ,ツノナシオキアミの個体数密度(inds./m3)は,いずれの年においても幼生,成体ともに春季に顕著に増加し,夏季~冬季に減少する季節変動パターンを示した(図2)。この5年間における春季の個体数密度は幼生,成体ともに2003年が最も高く,その年変動の幅は初期幼生で最大約50倍,後期幼生~成体で最大約140倍と著しく大きな経年変動を起こすことが判明した(図2)。

 ツノナシオキアミの現存量と主たる餌である植物プランクトン量との関係を調べるため,2002~2005年の粟島西(AW)と姫埼沖(E)定点における4月下旬の後期幼生~成体の平均現存量(Bm)(mg/m3)と同海域の同年4月下旬,2月下旬,前年12月上旬,9月上旬,4月下旬,2月下旬と最大14ヶ月前に遡って,その時期における0~150m層のクロロフィル積算値(mg/m2) (Z)との間の相関関係を検討した結果(表1),特に,前年2月下旬との関係において相関係数r,寄与率r2,有意F がそれぞれ0.932,0.868,0.007と高い正の相関が認められ,その関係式として,Bm = 1.81×Z - 44.43 が得られた(図3)。この関係式は本年2月下旬の0~150m層のクロロフィル積算値を求めることによって14ヶ月後の来年4月下旬のツノナシオキアミ現存量を予測できることを意味する。また,そのメカニズムとして,植物プランクトンの春季ブルーミングの早遅と多寡がその年のツノナシオキアミ産卵量と幼生の生残に影響し,それによって翌年4月の成体量が大きく変動すると考えられた。

成果の活用面・留意点
・春季にツノナシオキアミを摂餌して栄養を蓄積し、冬季に産卵するアカガレイの総産卵量の推定のために本成果の関係式が活用され、早春の植物プランクトン量からツノナシオキアミを介在して約2年後のアカガレイの総産卵量を推定するモデルが構築されている。


図表1 229839-1.pdf
カテゴリ 季節変動

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる