親潮・混合域における珪藻休眠胞子に対するカイアシ類の摂餌選択性

タイトル 親潮・混合域における珪藻休眠胞子に対するカイアシ類の摂餌選択性
担当機関 独立行政法人水産総合研究センター東北区水産研究所
研究期間 2005~2006
研究担当者 高橋一生
桑田 晃
発行年度 2006
背景・ねらい
親潮・混合域では毎年春季に珪藻を中心にした植物プランクトンのブルームが起こり、この海域の高い魚類生産や温暖化物質吸収機能の根幹を担っていることが知られている。近年の研究によってこのブルームを起こす種類は生活環中に休眠胞子を生じる時期をもつ沿岸性の珪藻によって占められていることが明らかになってきた(図1)。この休眠胞子が増大するブルーム終期は、カイアシ類などの動物プランクトンの生物量が年間で最も高くなる時期と一致しており、これら動物プランクトンが休眠胞子を餌料としている可能性がある。一方、厚い殻をもつ休眠胞子は、動物プランクトンの消化管を通過、排泄後も生残可能であるという断片的な報告もある。本研究では親潮・混合域生態系における珪藻休眠胞子の生態的役割を明らかにするため、動物プランクトン、とくにカイアシ類(図2)を用いて、珪藻休眠胞子に対する摂餌速度、選択性、摂食行動ならびに摂食後の胞子の生残率を調べた。

成果の内容・特徴 親潮・混合域において優占するカイアシ類2種に珪藻キートセラスの休眠胞子、栄養細胞を摂食させ,摂餌速度、選択性を測定した。また摂食実験後、カイアシ類の糞粒を回収し、培養することで消化管通過後の胞子の生残率を測定した。両カイアシ類種とも休眠胞子に対して負の選択性を示した(図3)。また栄養細胞を摂食した場合、糞粒からの発芽率は両種とも0%であったのに対し、休眠胞子では27-78%の糞粒から発芽がみとめられた。以上の結果より珪藻休眠胞子は、カイアシ類の餌料としての価値が低く、珪藻にとって被捕食に対する防御機構として機能している可能性を示唆した。

成果の活用面・留意点
・親潮・混合域春季ブルーム期における物質循環の解明
・温暖化・気候変動に対する環境変動予測
・珪藻類の生活史戦略


図表1 229850-1.png
図表2 229850-2.png
図表3 229850-3.png
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