アユ冷水病菌Flavobacterium psychrophilumの遺伝子型の判別法

タイトル アユ冷水病菌Flavobacterium psychrophilumの遺伝子型の判別法
担当機関 独立行政法人水産総合研究センター養殖研究所
研究期間 2004~2006
研究担当者 乙竹 充
吉浦康寿
松山知正
中易千早
発行年度 2006
背景・ねらい
アユの冷水病の防除対策に向けて,まず冷水病菌Flavobacterium psychrophilumの感染伝播経路および河川での動態を把握するための疫学的調査が必要となっている。これまで冷水病菌の疫学マーカーとして,ジャイレースB遺伝子を標的としたPCRに付随して増幅される290 bp断片に多型があり,それによって本菌は2種類の遺伝子型(A型およびB型)に分けられること,またA型はアユ由来菌株にのみ認められることが報告されている。しかし,本断片が如何なる遺伝子の一部であるかは不明である。また,本断片の検出は,縮重プライマーが用いられているため不安定である。さらに遺伝子型を特定する部位がプライマーの近傍にあるため,変異部位を標的とした新たなプライマーを設計することが困難である。このように,本断片を特異的かつ安定的に増幅するPCRが確立されていないことから,この290 bp断片は疫学マーカーとして有用であるにも関わらず,利用しにくいのが現状である。そこで本研究では,290 bp断片の近傍の塩基配列を決定し,この断片を含む遺伝子領域を同定した。そして,本塩基配列をもとに新たなプライマーを設計して遺伝子型判別法の改良を行った。さらに,遺伝子型と抗原性の関連についても検討した。

成果の内容・特徴 新たに作製したPCR(表1)を用いると冷水病菌でのみ特異的な増幅が確認され,近縁種およびその他の魚病細菌では増幅が認められなかった (図1)。またA型(図2)はアユ由来の冷水病菌にのみ認められる遺伝子型であることが再確認された。さらに,A型菌で作製したワクチンはB型菌にも有効であることがわかった(図3)。なお,この遺伝子がコードするアミノ酸配列は細菌由来の既知の異性化酵素(peptidyl-prolyl cistrans isomerase C)と相同性を示した。

成果の活用面・留意点
魚病細菌を検査対象とした場合には,本PCRにより冷水病菌を特異的に検出できると考えられる。環境由来細菌についても,これまでに冷水病菌以外の菌で本PCRに陽性を示すものは認めていないが,Flavobacterium属の細菌は魚病細菌以外にも土壌や水圏の環境中に数多く存在しており,それらの多くが未同定であることから,環境由来の分離菌株および DNA試料を鋳型として本PCRを行った場合,冷水病菌以外の本属の細菌に対して陽性反応が起こる可能性がある。


図表1 229873-1.png
図表2 229873-2.png
図表3 229873-3.png
図表4 229873-4.png
カテゴリ 病害虫 防除

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