タイトル | 河川中流域の魚類に対する河畔植生の効果 |
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担当機関 | 埼玉県農林総合研究センター水産研究所 |
研究期間 | 2000~2004 |
研究担当者 |
飯野哲也 水産環境担当 |
発行年度 | 2006 |
背景・ねらい | 河畔の植生は魚類の餌料となる昆虫や生息の場を供給するなど、魚類の生息にとって重要な役割を果たしていると言われている。しかし、それを実証する研究事例は少なく、特に河川中流域での事例はほとんどない。そのため、河川改修等では治水や景観が優先する結果、河畔林や水際の植物が減少し、生息魚類への影響が懸念されている。 そこで、河川中流域に生息する魚類に対する河畔植生の機能を具体的に明らかにするため、河畔植生と餌料生物及び魚類群集の種多様性との関係について検討した。 |
成果の内容・特徴 | 県中央部を流れる都幾川で調査を行った。調査場所の川幅は10~20mで、底質は砂礫であった。河畔林の機能を検討するために、河畔林のある場所とない場所で、付着藻類量(強熱減量)と水生昆虫量(湿重量)を比較した。ここで、ほぼ水際から形成されている林を河畔林とし、氾濫原以外の林も含めた。設定した河畔林のある場所の上下流には河畔林が点在し、河畔林がほぼ見られなくなった約8km下流に河畔林のない場所を設けた(図1)。 周囲に河畔林がある場所2カ所と河畔林がない場所1カ所で、5月・7月・10月・12月に合計12回付着藻類と水生昆虫を採取した結果、付着藻類量と水生昆虫量に正の相関(r=0.688、p<0.05)が見られた(図2)。また、河畔林がある場所(水面が樹冠に覆われていない6地点)と河畔林がない場所(3地点)で7月と12月に付着藻類量を比較したところ、両時期とも河畔林がある場所の方が多かった(p<0.05:U検定)(図3)。 次に上述の場所において、水際に草本類が繁茂する場所(3~4地点)と水際がコンクリートで護岸化され草本類のない場所(3~4地点)で、採捕魚から求めた種多様度(Shannon指数H')を比較した。その結果、草本類が繁茂している場所ではH'に変化がなかったのに対して、コンクリート護岸化された場所では6月と12月に草本類が繁茂している場所に対して著しく低かった(p<0.01:t検定)(図4)。このことから、水際の草本類が周年を通じて魚類が生息するために重要であることが示唆された。 |
成果の活用面・留意点 | ・河川改修関係機関に対して、河畔林保全の情報提示資料として活用する。 ・農業用水路の改修に際しても、同様に関係機関への提示用資料として活用する。 |
図表1 | 229908-1.pdf |
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