タイトル | ズワイガニのメガロパ期の生残向上により,稚ガニの1万尾生産に成功 |
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担当機関 | 独立行政法人水産総合研究センター小浜栽培漁業センター |
研究期間 | 2006~2010 |
研究担当者 |
山本岳男 |
発行年度 | 2008 |
背景・ねらい | 当センターでは1984年からズワイガニの種苗生産技術の開発に取り組み,2005年までにゾエア期の基礎的な飼育条件として,幼生の水槽底への沈下防止手法,主餌料であるワムシへの栄養強化,および細菌感染症の防除の必要性を明らかにした。その結果,数万尾単位のメガロパ生産が可能となったがメガロパ期の飼育条件が未解決のため稚ガニの量産には至っていない。そこで2006年からメガロパ期の生残向上に取り組み,本年度はメガロパへの脱皮時の減耗防除(試験1)とメガロパ期の水温条件(試験2)について検討した。 |
成果の内容・特徴 | 試験1では,水槽底の残餌,糞等の沈殿物がメガロパへの脱皮に及ぼす影響について,沈殿物の量を0(対照区),底面の1/4量,1/2量に変えて比較したところ,生残率は沈殿物量の増加に伴って減少した(表1)。このため,量産試験(20kL水槽)では移槽による沈殿物との接触防止を検討した。ゾエアの蝟集方法として光照射(300W)と反射板(30cm角の白板)を利用しサイフォンによる移槽を行った結果,両者の併用による蝟集効果は有意に高く(図1),また移槽によるゾエアへの悪影響も認められなかった(表2)。 試験2では,ゾエア期の飼育水温(14℃)を基準に,11℃,8℃,5℃および3℃でメガロパを飼育した結果,稚ガニの出現率は8℃で最も高くなった(図2A,B)。5℃および3℃は天然海域での生息水温の範囲と考えられるが,今回の試験で出現率が低下したのは稚ガニまでの脱皮期間が長くなったことで底質が悪化したことが原因と考えられる(図3)。飼育水温を9.5℃前後とした量産規模(3~6kL水槽)での実証試験で,稚ガニの出現率は38.8~66.6%と自然水温(12~13℃)の9.9~26.5%よりも向上した(表3)。これらの成果により,稚ガニの総生産数は過去最多の18,412尾に達した(図4)。 |
成果の活用面・留意点 | ・水温とメガロパ~稚ガニまでの脱皮期間は,天然での生態の指標となる。 ・生産した稚ガニを長期飼育することで,天然での稚ガニの成長の解明に寄与できる。 ・生産種苗の放流には,さらに安定的な大量生産技術を開発するとともに,中間育成や標識手法,放流方法等の技術の開発が必要である。 |
図表1 | 230092-1.pdf |
カテゴリ | 病害虫 防除 |