タイトル | 宮城県沿岸域海底に生息するヒトデを簡単に有効活用できないか? |
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担当機関 | 宮城県水産技術総合センター |
研究期間 | 2006~2009 |
研究担当者 |
押野明夫 |
発行年度 | 2008 |
背景・ねらい | 宮城県沿岸域漁場では,底曳き網漁業等の操業時にヒトデ類が大量に入網し,漁獲効率の低下を招いている。また,仙台湾のアカガイ資源の増大のためにも食害生物であるヒトデの生息密度を下げる必要があると考えられる。これらのことから,各漁業で混獲されたヒトデを陸揚げし適切な方法で処理するため,当県の畜産試験場と連携しヒトデを混合したたい肥の作製を検討した。 |
成果の内容・特徴 | 1.仙台湾浅海域のヒトデ現存量推定とアカガイ捕食サイズの解明 アカガイの漁場は水深が15~25mの海域ですが,マヒトデを主としたヒトデ類が生息し,水深帯が深くなるほどスナヒトデが多くなる傾向がある。ニッポンヒトデは少なく,まれにイトマキヒトデも見られる。各調査点のヒトデ類の重量密度と海底の面積(表1)から仙台湾(石巻湾)の水深40m以浅には9,000トン前後のヒトデが生息すると計算された。マヒトデは,ほぼ腕長(ヒトデの中心から腕の先端までの長さ)の65%以下のアカガイを捕食することが室内実験から判明した (図2)。アカガイ天然漁場のマヒトデは大きいもので8cm程度なので5cm以下のアカガイの食害が危惧されている。 2.ヒトデ類を混合したたい肥作製技術開発 県畜産試験場と当センターが連携し,ヒトデ混合たい肥の作成技術の開発が進められてきた。作製素材の組み合わせを工夫した結果,植物油の添加により最大の課題であった作製工程での各臭気成分は殆ど発生しない画期的なたい肥化技術が開発された。現在,いくつかの浜で漁業者によるたい肥化試験が始まっている(写真1)。ヒトデ混合たい肥はカリウムが少なくカルシウム分が多い優良な肥料で,ホウレンソウの栽培試験では従来の牛ふん堆肥に比べ13~15%の収量増となり(表2),農作物栽培・園芸での応用が期待されている。本技術は基本的に季節を問わずに使えることが確認されているが,材料のヒトデは出来るだけ鮮度が保持されている必要があること,優占種のマヒトデ産卵が2月下旬頃に始まる親ヒトデを間引きすれば次世代発生量の抑制も期待できることから,適期は冬季であると考えられる。 |
成果の活用面・留意点 | ・ヒトデの除去が進み,有用貝類の漁獲効率の向上や食害による漁業被害の軽減が見込まれる。 ・混合たい肥の作製素材は,約3,000円/トンの牛たい肥,ほぼ無償のもみ殻,ヒトデおよび使用済み食用油で極めて低コストであり,各浜でのたい肥化普及のほか将来は商品化も期待されている。 |
図表1 | 230107-1.pdf |
カテゴリ | 肥料 低コスト ほうれんそう |