タイトル | CBB培地を用いたせっそう病原因菌の簡便な検出 |
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担当機関 | 独立行政法人水産総合研究センター養殖研究所 |
研究期間 | 2006~2010 |
研究担当者 |
大迫典久 |
発行年度 | 2008 |
背景・ねらい | せっそう病の診断には、原因菌であるAeromonas salmonicida subsp. salmonicidaを検出することが重要である。本菌は特徴的な水溶性の褐色々素を産生し、さらに、病魚の場合では検査対象臓器とされる腎臓から本菌のみが多数分離されることから、培養による検出は容易とされていた。しかし、近年、不顕性感染魚(保菌魚:キャリアー)の診断には、腎臓だけではなく鰓や体表および腸管、さらに体腔液の検査も重要であることが指摘された(Cipriano and Bertolini 1988)。鰓、腸管、および体表は、原因菌以外の雑菌が非常に多く、これらの部位から検出しようとしても原因菌の褐色々素産生が抑制され、形状や色の類似した雑菌のコロニーとを明瞭に判別することは困難であった。 そこで、求める原因菌を迅速に判別する方法として、原因菌を特異的に染色する色素(CBB)を含む培地を作製し、その有効性を検討した。 |
成果の内容・特徴 | クーマシブリリアントブルー (Coomassie Brilliant Blue: 以下CBB ) は、原因菌の Aeromonas salmonicida菌体外部に形成する59 kDa分子量を持つタンパク質層(A-layer)と強い親和性があり、菌のコロニー(集落)を濃染する特徴がある。そこで、寒天平板培地にCBBを0.1 mg/ml培地となるように添加してCBB培地を作製し(図1)、せっそう病原因菌Aeromonas salmonicidaの分離に対する有効性について検討した。実用上の有効性を確認するため、不顕性感染しているサケ、サクラマス、カラフトマスの腎臓,鰓,腸管を綿棒もしくは滅菌プラスチックエーゼで採取し、CBB培地に塗抹後、15℃で5日間培養し、出現したコロニーの着色状況(周囲が明瞭な濃紺色のコロニーとして他の細菌から区別される)を判定し原因菌の選択を行った(図2)。選択された菌がA. salmonicidaであることを確認するために、これらの菌の主要な性状やPCR法、FAT法による検査を行い、その結果全て原因菌と同定された。これらより、鰓や腸管などの他の雑菌が多い試料からも効率的にせっそう病原因菌を検出できることがわかった。 |
成果の活用面・留意点 | 1.シロサケ採卵親魚捕獲場で鰓表面でのせっそう病原因菌の検出率の変動を調査検討したところ、河川への遡上尾数の増加に伴い菌検出率が増加することが明らかとなった(図3) 2.簡易な検出法であるため、正確性が求められる診断では、他の方法(PCR法)等と組み合わせて行う。 |
図表1 | ![]() |
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