日高川およびその周辺海域におけるアユの資源変動

タイトル 日高川およびその周辺海域におけるアユの資源変動
担当機関 和歌山県農林水産総合技術センター
研究期間 2005~2007
研究担当者 加藤邦明
原田慈雄
藤井久之
発行年度 2008
背景・ねらい
アユは和歌山県において重要な漁業・観光資源であるが,近年,資源量の減少が著しい.アユの遡上量予測や資源の回復・安定化策を講じるためには,資源変動要因の解明が重要である.和歌山県では海産稚アユの採捕量データが揃っており,また,海産稚アユ採捕区域のほぼ中心部に流入する日高川では流下仔魚や遡上稚魚の調査が継続されている.これらの資源データと環境条件との関係から資源変動様式の変遷を調べるとともに,特に近年(1998年以降)の資源変動要因について考察した.
成果の内容・特徴 1 流下仔魚数・海産稚アユ採捕量・遡上稚魚数は1982年付近を境に大きく減少し,それ以降,1980年以前のような大きな資源変動は認められなくなった(図1).
2 資源水準の高かった1978年から低水準の2007年までの全体としてみると,流下仔魚数と遡上稚魚数には正の相関がある(図2A).しかし,近年の低水準期だけでみると,遡上稚魚数には約37-466万尾という変動があるが,流下仔魚数と遡上稚魚数に有意な相関は認められない(図2B).すなわち,近年の低水準期における遡上稚魚数の変動を説明する上で,海域での生残率変動が流下仔魚数の変動よりも相対的に大きな意味を持つと考えられる.
3 産卵期(10月)の雨の重要性については,「産卵場が綺麗に洗われ,産卵が好調となる」点がこれまで特に強調されてきた.しかし近年の日高川において,産卵期の雨には総流下仔魚数を増加させるという働きは認められず(図3), 11-12月の雨が多いほど総流下仔魚数は増加する傾向にあった(図4).一方,産卵期のまとまった雨には河川回帰率を向上させる働きが顕著に認められた(図5).
成果の活用面・留意点
本研究および浅海域におけるプランクトン調査とアユ仔稚魚の成長解析から,「10月のまとまった雨により河川から添加される栄養塩量が増加し,アユ仔稚魚成育場である浅海域での植物プランクトン発生量も増加,次いで仔稚魚の餌となる橈脚類の発生量も増加して,生残率が向上する」という仮説が立てられた.信頼できるアユ遡上量予測やアユ資源の回復・安定化策の検討を行うためには,アユ資源変動メカニズムの解明を各地域で行っていく必要がある.

図表1 230171-1.pdf
カテゴリ

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる