ブリ人工養成魚からの早期採卵で数万尾単位の種苗生産に成功

タイトル ブリ人工養成魚からの早期採卵で数万尾単位の種苗生産に成功
担当機関 独立行政法人水産総合研究センター五島栽培漁業センター
研究期間 2006~2010
研究担当者 吉田一範
中川雅弘
服部圭太
堀田卓朗
本藤靖
発行年度 2008
背景・ねらい
ブリ類は我が国の魚類養殖生産量の半分以上を占める重要な対象種である。しかし、ブリ養殖に用いる種苗は4月から5月にかけて採捕される天然稚魚(モジャコ)に依存しており、種苗の入手時期やサイズが限られている。そこで人工採卵の時期をコントロールし、ニーズに合わせて種苗を安定供給することができれば、より効率の良い養殖生産が可能となる。また、完全養殖の技術は、モジャコよりも高成長、高耐病性など有用な経済形質を付与するための選抜育種の基となるものであり、より養殖生産に適した特性を持つ人工種苗が供給できるようになると期待される。
成果の内容・特徴 平成16年12月に行った早期採卵で得られた受精卵を用いて種苗生産を行い、これらを満3歳まで親魚養成して、継代的に同時期の早期採卵を試みた。採卵に先立ち、約3カ月間、日長時間と水温の制御によって早期成熟促進を図ったところ、雌の75.0%の個体で卵黄形成をほぼ完了したと考えられる段階まで成熟が認められた。これらにホルモン(HCG)を投与して採卵した結果、総採卵数147.8万粒、受精率73.6%となった(表1)。これまでの早期採卵試験においては、ふ化率が10%前後にとどまる事例が多かったのに対して、今回は順調に発生が進みふ化率が55.1%と大幅に向上し、合計81.5万尾のふ化仔魚を得ることができた。通常期に天然魚由来の親魚から採卵した場合と比べても遜色の無い結果だったことから、完全養殖型早期採卵によって量産レベルで受精卵が得られることが明らかになった。これらのふ化仔魚約36万尾を水量55klのコンクリート水槽1面に収容して、ワムシ、アルテミア、人工配合飼料を給餌し水温22℃で種苗生産を行った。平成20年1月13日から54日間の飼育を行い、全長42~45mmの種苗を合計5.1万尾生産した(表2)。人工養成親魚由来の受精卵を用いた量産飼育としては、初めて数万尾単位の種苗生産に成功した。
成果の活用面・留意点
早期採卵由来の大型種苗による養殖試験が可能となった。
早期生産の大型種苗は、天然種苗よりも早い時期に商品サイズに到達し端境期に出荷できるなど、周年出荷が求められるブリ養殖の効率化に寄与することが期待される。
完全養殖サイクルの確立により、有用な形質を持った養殖品種の開発に貢献できる。
完全養殖型早期採卵の技術は、カンパチ等の有用な魚類養殖対象種に応用可能である。

図表1 230194-1.pdf
カテゴリ 育種 出荷調整 品種

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