米の輸入自由化が中山間地域の農業・農村に及ぼす影響

タイトル 米の輸入自由化が中山間地域の農業・農村に及ぼす影響
担当機関 東北農業試験場
研究期間 1992~1992
研究担当者
発行年度 1992
要約 米の輸入自由化が及ぼす影響として、東北の中山間農村の農家・農業指導者が最も深刻であると認識しているのは、生産意欲の低下、農家間の連帯の喪失、専業・第1種兼業農家の分解と農業後継者の都会への流出、農業の担い手の急速な高齢化、生産組織の形成力の弱化と集落農業の展開の困難性、耕作放棄地の増加ならびに地域活力の低下等である。
背景・ねらい 米の輸入自由化に対する農家、農業関係者の不安は大きく、今後の農業展開の大きな
不安定要因となっている。しかしながら、米の輸入自由化が農業・農村に及ぼす
影響解明に関する研究はいずれもマクロな立場からなされたものであり、農家の
対応行動を明確に解明した評価が実施されていない。ここでは、岩手県の中山間農村である遠野市の農家、農業指導者を対象に、米の輸入自由化が農業・農村に及ぼす
多面的な影響を解明する。
成果の内容・特徴
  1. 図1に示した手順で分析を実施した。シナリオ調査結果を見ると、その他の要因が現状維持で、
    輸入自由化によって米価のみが1割低下するというシナリオの場合には25%の
    農家が「所得確保のための努力をする」と回答しているが、低下水準が2割になると
    18%に、3割の低下では13%に、4~5割の低下では11%低下してしまう。特に経営規模が1~2ha層の対応が不安定であり、輸入自由化により
    米価の大幅な低下が発生するとともに食管制度の廃止が行われた場合に流動的な
    対応をとることが示唆された
    (表1)。
  2. 高齢者や兼業農家では米価の低下水準やその他の要因の動きに関わり無く「現状維持」志向
    が強いが、若い農業者や専業的農業従事者では、3割程度までの米価低下に対しては
    「経営の複合化」などによって所得拡大いに努力するが、それ以上に米価が低下した場合は
    「農地をもったまま農業生産をやめる」と回答した者が比較的多かった。なお、
    この傾向は生産組織に加盟していない農家で強く認められた。
  3. TN法第1ステップを用いて抽出した92項目の影響要因を整理し、表2に示した40の
    影響要因に整理した。DEMATEL分析の結果、輸入自由化の影響として最も深刻であると
    認識されている(他の要因に及ぼす総合効果と他の要因から受ける総合効果の合計値が
    3以上になるもの)のは、生産意欲の低下、農家間の連帯の喪失、
    専業・第1種兼業農家の分解と農業後継者の都会への流出、農業の担い手の高齢化、
    生産組織の形成力の弱化と集落農業の展開の困難性、耕作放棄地の増加ならびに
    地域活力の低下等である。また、農政不信の拡大、圃場整備の停滞、農協事業の不振、
    地域人口の減少と高齢化等についても比較的大きな影響が発生すると認識されている
    (表2)。
成果の活用面・留意点 東北地域の中山間農村の稲作農家ならびに農業指導者の意識の特徴から、米の
輸入自由化のもたらす多面的な影響を評価できる。なお、この情報は、あくまでも
代表的な農家・農業指導者の意識を分析することによって得たものであることに
注意する必要がある。
図表1 230271-1.gif
図表2 230271-2.gif
図表3 230271-3.gif
カテゴリ 経営管理 中山間地域

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