タイトル |
北東北地方に分布するコナガの寄生蜂の種類相と発生消長 |
担当機関 |
東北農業試験場 |
研究期間 |
1995~1995 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1995 |
要約 |
青森、秋田、岩手各県のキャベツ畑においてコナガの寄生蜂の種類相を調査し、また盛岡市の東北農業試験場圃場内のキャベツ畑においてコナガの寄生蜂の発生消長を調べた。その結果、生物的防除に利用できる可能性のある優占種4種を確認した。
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背景・ねらい |
やませ地帯の中山間地域において、経済的に重要な位置を占めるアブラナ科野菜の重要害虫はほとんど鱗翅目に属している。現状ではこれらの鱗翅目害虫に対して殺虫剤散布等の防除手段を講じなければ、満足な収穫は望めない。しかし近年の環境保全への関心の高まりによって殺虫剤の使用は減らすことが求められている。またコナガは高度の殺虫剤抵抗性を発達させ、殺虫剤による防除が困難になっている。そこで環境保全型でより効果的な害虫防除法として、寄生性天敵の利用によるコナガの生物的防除法を開発するために、北東北地方におけるコナガの在来寄生蜂の種類相と発生消長を調べた。
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成果の内容・特徴 |
- 青森、秋田、岩手各県のキャベツ畑から採集したコナガの卵、幼虫、及び蛹から一次寄生蜂9種、随時二次寄生蜂3種、二次寄生蜂7種を確認した(第1表)。これは東北地方に分布するコナガの在来寄生蜂相をまとめた報告としては初めてのものである。
- 盛岡市における2年間の調査では、一次寄生蜂の内、寄生率が10%以上に達する優占種は、幼虫に寄生するニホンコナガヤドリチビアメバチ Diadegma niponicaとコナガサムライコマユバチ Cotesia plutellae、蛹に寄生するコナガチビヒメバチ Diadromus subtilicornis、幼虫に寄生して蛹から羽化するコナガヒメコバチ Oomyzus sokolowskiiの4種であった。
- 1994年に調査した盛岡市のキャベツ畑におけるコナガの4齢幼虫と蛹の発生消長、及び主要な4種の寄生蜂による寄生率の季節的変化を第1図に示した。コナガの4齢幼虫密度は6月から上昇を始め、7月上旬から下旬にかけてピークに達した。蛹の密度もこれより数日遅れて同様の推移を示したが、幼虫、蛹共に8月に入ると激減し、以後は低密度で推移した。これに対して寄生蜂に関しては、D.niponicaが5月末から4齢幼虫に寄生を開始したが7月中旬で姿を消し、C.plutellaeとD.subtilicornisは7月下旬以降に寄生率が上昇し、またO.sokolowskiiは8月になってから高寄生率を示すようになるなど、6月中旬から7月上旬のコナガの密度が急増する時期に有効に働く寄生蜂はいなかった。
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成果の活用面・留意点 |
コナガはアブラナ科野菜の重要害虫として知られ、殺虫剤抵抗性を高度に発達させているため殺虫剤による防除が困難になっている。今後は寄生蜂利用を中心としたコナガの生物的防除と、天敵に影響の少ない他の害虫に対する防除法を組み合わせた総合的害虫管理システムを開発して行く必要があり、コナガの在来寄生蜂リストはその重要な基礎資料となる。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
病害虫
あぶらな
害虫
管理システム
キャベツ
生物的防除
中山間地域
抵抗性
防除
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