タイトル |
農家からみた直播技術導入に伴う補助労働削減効果 |
担当機関 |
東北農業試験場 |
研究期間 |
1996~1997 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1996 |
要約 |
水稲直播技術には規模拡大効果やコストダウン効果のほかに補助労働を省く効果があり、農外恒常勤務の増加や高齢化により補助労働を女子労働力に依存することが困難になった農家では省力化へのニーズが強い。今日、東北地域でも女子農業就業者の減少が進み、直播技術の導入を促進する社会経済的条件が形成されつつある。
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背景・ねらい |
水稲直播栽培の導入については、 移植栽培の限界を超えた規模拡大やコストダウンがもっぱら強調されている。 しかし、直播を導入する経営には、稲作と複合部門の競合回避、 水田の維持管理などを目標とするケースも多数みられる。 そこで水田農業を維持するという見地から 水稲直播栽培技術の導入を促進する条件を検討する。
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成果の内容・特徴 |
- 東北農業試験場が現地実証試験を行っている山形県遊佐町において
水稲直播実践農家を対象としたアンケートによれば (表1)、 直播の長所として規模拡大ができる点を指摘したのは3分の1にすぎず、 低コストになると評価した人も4割にとどまった。 これに対して3分の2の実践者は補助者の労働負担が軽減されることを評価しており、 こうした見地から直播技術を経営的に評価する必要がある。
- 移植稲作における作業別労働時間を男女別にみると、
苗代一切、田植、稲刈り及び脱穀において女子労働の割合が高い (表2)。 現地実証試験で直播栽培に取り組んでいる事例経営においては、 さらにグレンタンク付きコンバインを導入して秋の補助労働を不要にしたため、 春の苗代一切と田植を省略できれば経営主によるワンマン作業が可能となる。 現在試験されている直播栽培では、 籾すり時の籾がら処理のみが妻の担当となっており、 直播技術の導入は女子労働力が担ってきた補助労働を省く可能性をもっている。
- 遊佐町においては水稲単作の集落が多く、
こうした集落では、比較的規模が大きく、経営主が農業に100日以上従事し、 農業所得が家計で重要な位置を占める農家であっても兼業経営が多い。 特に経営主の妻は工場などに勤務する傾向が強く、 また妻とともに補助的な農作業を担ってきた経営主の母たちも高齢化している。 このため遊佐町では農業就業者の減少、 特に農業就業者数が最も多かった50代の女子農業就業者の減少が激しく、 1990年から95年までのわずか5年間に30%以上減少した (図1)。 こうした傾向は東北6県に共通しているが、特に山形、福島で大きく、 補助労働を女子労働力に依存した農業の変質という直播技術の導入を促進する 社会経済的条件が形成されつつある。
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成果の活用面・留意点 |
直播栽培の普及においては、 技術水準や経営規模のみを条件として経済的可能性を示すだけでなく、 以上のように地域の経営資源や制約条件を踏まえた検討が重要である。 ただし上記のシナリオを考えるとしても、 現段階の直播栽培は農業所得の減少が大きいので、 減収量を抑える技術開発が早急に必要である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
規模拡大
経営管理
コスト
直播栽培
省力化
水田
水稲
低コスト
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