牛肉のATP−関連化合物の高精度分析方法とこれによる屠畜方法の評価

タイトル 牛肉のATP−関連化合物の高精度分析方法とこれによる屠畜方法の評価
担当機関 東北農業試験場
研究期間 1994~1996
研究担当者
発行年度 1996
要約 高速液体クロマトグラフィーを用いて牛肉中のATPとその分解物を高精度に分析することができる。また、ATPの分解の程度から屠畜時における筋肉の痙攣の程度を推定することができ屠畜方法の評価が可能である。
背景・ねらい ATP関連化合物(ATP,ADP,AMP,
イノシン酸(IMP),イノシン(Ino),ヒポキサンチン(Hyp),キサンチン(Xan))
は畜肉の鮮度指標として用いられ、またIMPは食肉の呈味成分として重要である。
これらは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分析されるが、
報告されている方法ではATP関連化合物を完全に分離したとは言えず、
各成分の純度検定も行われていない。
そこで、牛肉中のATP関連化合物の高精度な分析条件を検討し、
これらの化合物を用いた畜肉の鮮度指標を改変して、
屠畜時の痙攣の程度を数値化する方法を検討した。
成果の内容・特徴
  1. ATP-関連化合物の分析
    1. HPLCの条件
      カラム:Shimpak CLC-ODS(M)(4.6mm×15cm)(島津製作所(株))、カラム温度:24-28度、
      移動相流速:1.0mL/min、検出器:紫外部検出器(254nm)
      (方法A)
       移動相1:0.1M KH2PO4, pH 4.0.
       移動相2:0.1M KH2PO4, 10% CH3OH, pH 4.0.
      最初の5分間移動相1を100%流し、次の25分間で移動相2を直線勾配で50%まで上げる。
      続く10分間で移動相2を100%まで上げて、さらに10分間この状態で保持し
      カラムを洗浄する。初期状態に戻すため、1分間で移動相1に戻し15分間保持する。
      (方法B)
       方法AにおけるKH2PO4濃度を0.02Mとして
      pH4.8で同様に分析する。
      屠畜後4時間以内は方法Aによって分析出来るが、
      それ以上の時間が経過した場合はATPおよびIMPの純度に問題が生じるため、
      別途方法BによってATPとIMPを定量することが望ましい
      (図1)。
    2. 抽出方法
      筋肉約3gを精秤し、20mLの1.0規定冷過塩素酸水溶液でホモゲナイズ後、
      遠心分離(10,000×g, 15min.)し上澄を採取する。
      残渣はもう一度ホモゲナイズし同様に抽出後、
      前記の上澄と合わせて炭酸カルシウムを添加し中和する。
      遠心分離(10,000×g, 10min)後、上澄を50mLにメスアップし、
      0.45mのメンブランフィルターを通して
      20LをHPLCに注入し分析する
      (図2)。
  2. 屠畜方法の評価
    屠畜時に起こる筋肉の痙攣においては、ATPが分解してIMPとして蓄積した後に
    徐々に分解していくことが明らかとなっている。
    従って、畜肉の鮮度評価に用いられるK0値を改変して、
    ATP-関連化合物総量に対するIMP以下の分解物の存在割合を下記のように
    Ka値として算出することで、屠畜時の筋肉の痙攣の程度を推定することができる。
    (図3)は屠畜時に延髄・脊髄破壊処理をした場合の例である。
    Ka(%)=(IMP+Ino+Hyp+Xan)×100/(ATP+ADP+IMP+Ino+Hyp+Xan)
成果の活用面・留意点 カラムは長時間使用可能であるが、移動相が低濃度の場合、カラムの劣化
(シラノール残基の増加)によって分離の再現性に問題が生じることがある。
図表1 231052-1.gif
図表2 231052-2.gif
図表3 231052-3.gif
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