タイトル |
水稲生育ステージを特徴づける波長域とレッドエッジシフト |
担当機関 |
東北農業試験場 |
研究期間 |
1997~2000 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1997 |
要約 |
水稲群落の分光反射スペクトルは茎葉が増加する栄養生長期間と生殖生長期間、穂による反射が加わる出穂期、色素が崩壊する登熟期間に固有の特徴を示す。また、クロロフィル含有量と関係するレッドエッジ(red edge)は分げつ期から出穂までは725nmで安定であるが、登熟につれて695nmにシフトする。
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背景・ねらい |
衛星ならびに航空機搭載センサから得られた情報が、水稲生育状態、 ならびに病害虫や冷害被害などの各種被害の計測に有用であることが知られているが、 いまだ実用化されていない。 そこで、生育に伴う水稲の分光反射スペクトルの推移の特徴を 圃場における水稲群落およびポット栽培の水稲個体について検討し、 冷害やいもち病などによる水稲の生育異常を検出するスペクトル指標を作成したり、 現在運用中の衛星画像の解析の際の基礎とする。
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成果の内容・特徴 |
- 田植えから幼穂形成期では、
反射率は550nm付近をピークとする緑色波長域と赤外領域で増加する。 田面水を基準にとった変動率は可視域では小さく、 900nm以上の赤外域で大きくなっている。 とくに水分の吸収に反応することが知られている960nm付近や1200、1280nm付近、 1635nm付近に顕著なピークがみられる (図1)。
- 幼穂形成期から出穂揃いの間では、
反射率は出穂直前までは栄養生長期と同様に増加する。 出穂揃いになると出穂による特徴的な増加として、 可視から1340nm付近までの反射率が増加するが、それ以上の長波長域では減少する。 変動率は可視域で大きく、 495nmと665nm付近の2つをピークとする波長域でもっとも大きい (図2)。
- 出穂揃いから成熟期では、反射率は可視域、
特に530nmから720nmで増加し、725nmから1350nm域で減少する。 変動率は、485nm(カロチノイドの吸収域)と675(クロロフィルaの吸収域) のピークがもっとも大きくなる(図3)。
- クロロフィル含有率に関係するレッドエッジ
(red edge:一般的には680~750nm域で反射率の増加率が最大を示す波長をいう) は分げつ盛期頃から出穂開花期までは725nmで、 出穂開花期までは傾きが大きくなる傾向にある。 その後は、成熟がすすむにつれて傾きは小さくなり、 黄熟期から成熟期にかけてレッドエッジは695nmに移動し、 クロロフィル含有量の低下を示す (図4)。
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成果の活用面・留意点 |
- 水稲生育各時期における生育異常や病害発生程度を検出する
スペクトル指標を作成する際の参考になる。
- スペクトル指標作成の際は対象生育時期における変化の少ない波長域と
対象障害において特徴的に現れる波長域に着目する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
いもち病
害虫
水稲
凍害
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