タイトル |
高層気象データに基づくやませの分類 |
担当機関 |
東北農業試験場 |
研究期間 |
1997~1997 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1997 |
要約 |
高層気象データを用いてやませを7つのクラスターに分類した。それぞれのクラスターごとにやませの出現時期や低温の強さが異なり、東北地方の冷害年にはクラスター2に属するやませが多く出現する。
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背景・ねらい |
東北地方の暖候期に吹走するやませは、しばしば農作物に冷害をもたらすので、 その気象特性の解明と予測手法の開発が急務である。 しかしながら現在までのやませ研究の多くは解析的段階にとどまっており、 予測が可能な状況まで至っていない。 そこで本研究ではやませの予測法の開発を念頭において、 高層気象データによるやませの類型化を行う。
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成果の内容・特徴 |
- やませの分類法
使用した資料は青森県三沢における高層気象データ、 東北地方の気象官署とアメダスデータで、 時期は6~8月の3ヶ月で1979年から1993年までの15年分を用いた。 はじめに八戸の気象官署の一日24回の風向の3/4以上がN~SSEであり、 かつ日平均気温の平年偏差が0度C以下の日をやませ日として判定したところ、 15年間で397例が該当した。つぎにやませ吹走日について、 三沢の高層気象データ(温位、温位の鉛直減率、風の水平u成分) を用いてクラスター分析を行い、やませを7つに類型化した (図1)。 クラスタリング手法にはWardの最小分散法を用いた。
- 各クラスターに属するやませの特徴
各クラスターの特徴を気象要素を平均して調べた結果、 それぞれに特有の性質が認められ、またその主な出現時期も異なっていた (表1)。 クラスター2と6は気団が高く低温も強い。 クラスター2は6月下旬から8月上旬に主に出現するが、 クラスター6は6月にしか出現しない。クラスター3と4は低温が並の強さで、 クラスター3は7~8月に、4は6~7月に主に出現する。クラスター1と7は低温が弱い。 クラスター5は主に8月に出現し、東風が強いものの低温が弱い点が特徴的である。 クラスター2のやませの地上風向風速分布を 図2に示すが、 東風が強く、日本海まで吹き抜けており、気温偏差も-3度C以下の範囲が広い。
- 各クラスターの年ごとの出現頻度
1979年から1993年までのやませ吹走日の出現頻度と 八戸の6~8月の平均気温との間には相関係数0.75の相関が認められる (図3)。 6~8月の平均気温が気温平年値よりも低かった年は 1980~83年、1986年、1988年、1993年の7年で、 クラスター2~4のやませが多く出現している。 また、このうちの1980、81、88、93年の4年は作況指数が90を下回っており、 東北地方の広い範囲で冷害となった。 これら冷害年には、1981年を除いて、クラスター2の出現頻度が高い。 クラスター2のやませは広い範囲に強い低温をもたらすことから、 冷害に深く関わっていると考えられる。 1981年については、他の冷害年と比較して気温偏差がそれほど大きくなく、 またやませの吹走頻度も小さいことから、 やませだけでは不作の原因が説明できないと考えられる。
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成果の活用面・留意点 |
高層気象データを用いることにより、やませのおおよその侵入域が推定可能となる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
凍害
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