タイトル |
大規模稲作経営者と研究員の意識からみた稲作技術開発の方向性 |
担当機関 |
秋田県農業試験場 |
研究期間 |
1997~1998 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1997 |
要約 |
大規模稲作経営者と研究員の稲作技術に関する意識は、労働力の保有状況や経歴等を反映して異なっている。直播栽培のような新しい技術の開発には、収益性の確保が前提となるものの、省力性や快適性の追求という幅広い視点も不可欠となる。
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背景・ねらい |
稲作技術の内容は、栽培、作業、経営等多岐にわたっており、 その開発に際しての視点も多数存在する。 農業関係者の稲作技術に関する意識を定量的に把握して考察することは、 望ましい方向に技術開発を進めていく上での基本である。
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成果の内容・特徴 |
- パソコンによるAPH調査・分析システム(AHP-COAS、東北農試開発)を用いて、
大規模稲作経営者が稲作に求める「省力性」「収益性」「快適性」 の程度が把握できる(図1)。 調査対象の3名の経営者のうち、家族労働力が比較的多く(1人当たり経営面積7.5ha)、 消費者の安全性志向に対応した自然米や有機米を生産している2名は 「収益性」を重視している。これに対し、労働力が本人のみ(同15ha)の経営者は 「省力性」を最重要と考えている。 しかし、「省力性」の下位の階層についてみると、 3名はいずれも「春作業の省力化」を重視し、育苗や移植の省力化を求めており、 直播適応性品種の育成とともに、直播栽培技術の開発に期待している (表1)。また、「収益性」を重視する2名でも、 「快適性」の下位の階層では重要と考える項目が異なっており、 経営規模や労働力の保有状況等が、経営者の意識構造に大きく影響している。
- 秋田農試の研究員20名の重要視する項目は、
回答者の研究分野や経歴等を反映して異なっている (図1)。 研究管理者、経営研究者及び水稲育種・品質研究者は「収益性」を、 作業機械研究者は「省力性」を、 中堅研究者の一部は「快適性」を重要と考えており、省力、低コスト化とともに、 収量安定や作業軽労化のための技術開発の必要性も指摘できる。
- 複数の家族労働力がある大規模稲作経営では、
「省力性」より「収益性」が優先され、 直播栽培のような新しい技術の導入に際しては、所得の確保が前提となる。 しかし、農業従事者の減少と高齢化、女性化に対応する技術としては、 「省力性」とともに各種作業の「快適性」が要求される。 研究員はこの「快適性」についても重要と考えており、 環境負荷を軽減するための技術開発を含む幅広い視点が不可欠となる。
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成果の活用面・留意点 |
農業関係者の意識を把握することは、 試験研究の推進方向や課題の優先順位について考察する際の有力な手段となるが、 項目の設定に当たっては、落ちや偏りがなく、 調査の目的に合致した内容となるよう、十分に検討する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
育種
育苗
経営管理
軽労化
直播栽培
省力化
低コスト
春作
品種
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