モチコムギにおけるwaxy遺伝子の変異の解明

タイトル モチコムギにおけるwaxy遺伝子の変異の解明
担当機関 東北農業試験場
研究期間 1998~2000
研究担当者
発行年度 1998
要約 モチコムギが顆粒性澱粉合成酵素(Wxタンパク質)を欠く原因は、それらをコードする3種のwaxy遺伝子Wx-A1,Wx-B1,Wx-D1のそれぞれに23bpの欠失、完全欠失、588bpの欠失変異が生じているためである。
背景・ねらい アミロース合成のキー酵素である顆粒性澱粉合成酵素は、イネ科植物では、
waxy遺伝子座にコードされ、Wx(ワキシー)タンパク質と呼ばれる。
A,B,Dゲノムから構成される異質6倍体の普通系コムギ(Triticum aestivum L.)は、
各ゲノム由来の3種のwaxy遺伝子(Wx-A1,Wx-B1,Wx-D1)を持つ。
そのためWxタンパク質も3種類(Wx-A1,Wx-B1,Wx-D1)存在し、
全てのタンパク質を欠くモチ変異体は、存在しなかった。しかし、
3種のWxタンパク質のうち1ないし2個を欠く部分的モチ変異体の組み合わせにより、
Wxタンパク質を完全に欠き、そのためアミロースを欠く、
モチコムギが作出された。モチコムギには、
変異を起こした3種のwaxy遺伝子が集積されており、
その変異の原因を分子レベルで解明することは、
コムギの遺伝子発現機構の理解と遺伝子操作による
品種改良のための基礎知見となると考えられる。そこで、
モチコムギにおけるwaxy遺伝子の発現及び塩基配列に生じた変異を解析し、
アミロースが合成されない理由を明らかにした。
成果の内容・特徴
  1. モチコムギの未熟種子では、非常に弱いがwaxy遺伝子の転写産物が確認され
    (図1)、
    その大きさは、正常な転写産物(2.4kbp)より若干小さい。
  2. モチコムギのWx-A1遺伝子には、
    翻訳開始点を含む工クソン部分とそれに続くイントロンにまたがる23bpの欠失と
    4bpのフィラーDNAが存在する。そのため正常のスプライシングが行われず、
    トランジットペプチドをコードする配列のほとんどを欠き、
    通常の転写産物より117bp小さいmRNAが転写される
    (図2)。
  3. ゲノミックサザンにより、モチコムギにおいては、
    Bゲノム由来のwaxy遺伝子は確認されず、Wx-B1遺伝子は完全に欠失している。
  4. モチコムギのWx-D1遺伝子には、
    最終工クソンから未転写領域にかけ588bpの欠失と12bpのフィラーDNAが存在する。
    そのため、正常な3末端を欠き、
    未転写領域を含む通常の転写産物に比べて96bp小さい産物が転写される
    (図3)。
成果の活用面・留意点 得られた塩基配列を利用することにより、
部分的モチ変異体の選抜がPCRを使い可能となり、
低アミロース小麦の品種育成が効率的に行える。変異を起こしたWx-A1、
Wx-B1遺伝子は「関東107号」由来、Wx-D1遺伝子は「白火」由来である。
図表1 231280-1.gif
図表2 231280-2.gif
図表3 231280-3.gif
カテゴリ 小麦 品種 品種改良

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