タイトル |
水稲生育の広域監視等に利用可能な日平均水田水温の推定モデル |
担当機関 |
東北農業試験場 |
研究期間 |
2000~2000 |
研究担当者 |
桑形恒男
渡辺 力(森林総研)
濱嵜孝弘
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発行年度 |
2000 |
要約 |
水稲生育の広域監視などに利用可能な、日平均水田水温の推定モデルを開発した。本モデルでは、気象データと葉面積指数のみから、水田水温の日平均値が計算できるようになっている。
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背景・ねらい |
水稲生育の広域監視や冷害被害軽減などの目的で、水田水温を広域的に評価することが求められている。そこで本研究では、汎用性を考慮して、通常の気象データと葉面積指数のみから、水田水温の日平均値を推定するモデルを開発する。
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成果の内容・特徴 |
- モデルでは、まずはじめに稲がない水面(葉面積指数LAI=0)の日平均水温を計算し、それに葉面積指数に依存した補正量(図2)を加えることによって、水田水温を計算する(図1)。ただし生育初期(おおよそ葉面積指数が0.3未満の場合)においては、補正量をゼロとしても(すなわち水田水温と稲がない水面の水温が等しいと考えても)、大きな誤差とはならない。
- 稲がない水面の水温は、水面の熱収支式を解くことによって気象データより計算するが、日中と夜間に分けることによって、その計算精度を高める。
- 水田水温の日最高・最低値は水深に依存するが、日平均水温の水深依存性は小さい。したがって、モデルでは水深の影響を考慮しなくてもよい。
- 計算に必要な気象データは気温、風速、湿度、日射量、大気放射量の5要素であるが、大気放射量は気温、湿度、日射量の測定値より推定可能である。
- 東北農試圃場における計算と実測の比較(45日間)では、モデル計算の推定誤差(2乗平均平方根誤差)は、稲がない水面で0.57℃、水田で0.68℃であった(図3)。これは、既存の水田水温モデルの推定誤差に比べて、小さな値である。
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成果の活用面・留意点 |
- 用水温度が水田水温に比べてかなり低い場合(大まかな目安として日平均値で10℃以上の差がある場合)は、その影響を考慮する必要がある。その場合、用水温度の日平均値と曇天日の減水深のデータが必要となる。
- 湿度データが得られない場合は、精度は落ちるが近隣の気象官署のデータで代用できる。また東北地方における日射データには、1㎞メッシュ日射量推定値(東北大学理学部付属大気海洋変動観測研究センター提供)が利用できる。
- 水温補正量ΔTωの関係式(図2)の更新によって、モデルの計算精度が向上する可能性がある。また図2の関係式において、風速計の測定高度が2.5mと異なる場合は、風速計高度の違いに応じた風速データの補正が必要である。
- モデル計算における日中と夜間の時間帯の区分(図1)は、地域(経度の違い)に応じて多少変更する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
水田
水稲
凍害
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