リンゴMDAPIを導入したシロイヌナズナの早期開花性

タイトル リンゴMDAPIを導入したシロイヌナズナの早期開花性
担当機関 果樹試験場
研究期間 2000~2001
研究担当者 古藤田信博
和田雅人
発行年度 2000
要約 シロイヌナズナから単離された花芽形成遺伝子APETALAIと相同なリンゴ遺伝子MdAPIを単離し、本遺伝子をシロイヌナズナに導入した。得られた形質転換体15個体のうち5個体が早期開花性を示し、リンゴMdAPIが花芽形成を促進する機能を有することが明らかとなった。
背景・ねらい リンゴは通常7~8年の幼若期間を有し、交雑育種推進上の障害となっているが、花芽形成遺伝子の導入によってリンゴに早期開花性を付与できれば、育種年限短縮が可能になると考えられる。そのため、リンゴ生殖器官の形態形成を支配する複数の遺伝子群を単離し、それらの発現特性を解析する。次に、単離した遺伝子をモデル実験植物であるシロイヌナズナに導入し、花芽分化に関与する遺伝子の過剰発現あるいは発現制御が花芽形成に及ぼす影響を検討する。最終的には花芽形成遺伝子を導入したリンゴの早期花成素材を開発する。
成果の内容・特徴
  1. リンゴ「紅玉」の萼(がく)よりMdAPI(Malus×domesticaAPI)のcDNAを単離し、配列を決定した。アミノ酸配列における相同性はシロイヌナズナAPETALAI(API)遺伝子、キンギョソウSQUAMOSA(SQUA)遺伝子に対してそれぞれ66%、70%であった。
     
  2. MdAPI遺伝子は、がくに特異的に発現した(図1)。リンゴ花芽茎頂においては、がく原基の形成が見られる10月上旬から発現し始めた。リンゴの花芽形成は7月中旬頃から始まるため、本遺伝子は、初期の花芽分化には関与していないことが示唆された。 
      
  3. MdAPI cDNAをCaMV 35Sプロモーター下流につなぎ、アグロバクテリウム法によりシロイヌナズナに導入した。形質転換体は15個体得られ(表1)、導入遺伝子の発現を確認した(図2)。そのうちline No.1~5の5個体が早期開花性を示した。早期開花した個体は何れもロゼット葉が少なく、2~3枚程度で栄養生長が停止した(図3)。早期開花の著しい個体では有限花序となり花器官に形態異常が見られた。これらの特徴は、後代に遺伝することも確認した。以上の結果より、MdAPIはAPIと同様に、花芽形成を早期化させる機能を有することが明らかになった。
成果の活用面・留意点
     
  1. 木本植物のリンゴと草本植物のシロイヌナズナとでは、必ずしも花芽形成機構が同じであるとは限らない。MdAPIはリンゴ樹体内においても後期段階の花芽分化あるいは花器官形成に関与している可能性が示唆されたが、今後、本遺伝子をリンゴに導入することにより、早期開花性を付与できるかどうか検討する必要がある。
図表1 231648-1.jpg
図表2 231648-2.jpg
図表3 231648-3.jpg
図表4 231648-4.jpg
カテゴリ 育種 りんご

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる