プチロラクトン1を用いたウシ未成熟卵子の保存方法

タイトル プチロラクトン1を用いたウシ未成熟卵子の保存方法
担当機関 東北農業試験場
研究期間 2000~2000
研究担当者 永井 卓
今井 敬(畜試)
竹之内直樹
平尾雄二
発行年度 2000
要約 ウシ未成熟卵子をブチロラクトン1を含む培養液中で培養すると、体外成熟・受精後の発生能を損なうことなく24時間卵子を保存できる。この保存法により、一度に多くの卵子を試験に使用できる。
背景・ねらい 体外受精・クローン技術による家畜の効率的な生産には、一度に多数の高品質な成熟卵子が必要である。しかし、卵子の成熟を人為的に制御できる技術がないため、卵巣採取当日に回収した卵子を直ぐに使用せざるを得ず、その数に限りがある。ところが、最近、細胞周期を制御するカイネースの阻害剤であるブチロラクトン1(BL-1)が、家畜卵子の成熟を効率的に抑制することが報告された。そこで、本研究ではウシ未成熟卵子をBL-1を含む培養液中で培養し、その成熟抑制効果を調べ、さらに、抑制解除後の未成熟卵子を体外成熟・受精し、その後の発生を調べることにより、BL-1がその発生能を損なうことなく卵子を保存できるかどうかを明らかにする。
成果の内容・特徴
      
  1. 食肉処理場で採取した卵巣から回収したウシ未成熟卵子を培養液(TCM199液+3㎎/mlウシ血清アルブミン)中で培養する際、BL-1を添加すると濃度依存的に成熟が抑制される。100μMの濃度で添加するとほとんどの卵子(86%)の成熟を抑制することができ、その後、成熟培養液(TCM199液+5%子牛血清)に移し、20時間成熟培養することによって、83-90%の高い成熟率を得ることができる。
      
  2. BL-1を100μM含む培養液(TCM199液+3㎎/mlウシ血清アルブミン)中で、ウシ未成熟卵子を48時間まで培養すると卵子の95%において成熟が抑制され、その後の成熟培養によって84%が成熟する。得られた成熟卵子に体外受精を行うと、24時間保存培養の場合には、無処理の卵子と同様の発生するが、48時間培養するとその発生成績は対照区と比較して有意に低下する。(図1)
      
  3. 結論として、保存培養液への100μMのBL-1添加によって、ウシ未成熟卵子をその品質を低下させることなく24時間保存することができる。
成果の活用面・留意点
     
  1. BL-1を用いた卵子の保存法により、一度に多くの卵子を試験に使用できる可能性がある。
  2. 48時間保存したウシ未成熟卵子の品質低下の原因を突き止める必要がある。
  3. BL-1を用いて24時間保存した卵子から得られた胚盤胞期胚の移植試験を行う必要がある。
図表1 231737-1.jpg
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