タイトル |
意思決定の改善を意図したコンフリクト視覚化技法 |
担当機関 |
東北農業試験場 |
研究期間 |
2000~2000 |
研究担当者 |
林 清忠
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発行年度 |
2000 |
要約 |
決定が行き詰まった状況(コンフリクト)を視覚的に理解するための方法を開発した。生産者や関連団体等の利害関係者が行う組織的意思決定の改善に資することができる。
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背景・ねらい |
生産・出荷に関わる共同利用施設の設置や新たな組織形態の導入は、農業の振興や農村の活性化のための基礎的方策であると考えられる。しかし、利害関係者の間での価値観や認識の違いから、それらの導入についての決定過程が円滑には進まない場合も多いと思われる。そこで、複数の利害関係者が関与する意思決定過程の改善に資するため、行き詰まった状況(コンフリクト)を視覚的に理解する方法を提案する。
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成果の内容・特徴 |
- この技法は、コンフリクトの視覚化を通して、農業に関連した組織において意思決定が行き詰まった状況を、より理解しやすくするためのものである。分析手順は、次のように要約される(図1)。(1)時間の経過と意思決定者の対応関係を記述するチャート化、(2)オプション(各意思決定者にとっての選択肢)と状態(オプションの選択・非選択の組合せ)の定義、(3)各意思決定者の状態に対する選好順序の樹形図による決定、(4)均衡解(各意思決定者がそこから離れようとするインセンティブをもたない安定した状態)の算出、(5)現状とは異なったどのような可能性が考えられるかを検討するためのシナリオ分析からなる。
- どのようにコンフリクトが視覚化できるかを、共同利用施設(共同選果場)の導入(既存施設の整理統合)過程でみられたコンフリクトを例に説明する。まず、意思決定者は「行政機関」「農協」「生産者」であり、コンフリクトのチャート化によって、これら意思決定者の間での一連の相互作用の理解が容易になる(表1)。この例では、1995年2月に意思決定が行き詰まった状況がみられた。次に、状態は各意思決定者のオプション(それぞれ「集出荷対策支援」、「集出荷対策実施」、および「共選場の統合」「情報管理システム構築」)の選択(1)・非選択(0)の組合せとして定義される(表2)。
- シナリオ分析によって、どのように現状が変えられるかを検討することができる(図2)。ここでは、「農協」の選好を例に説明する。「農協」がオプション2の非選択(-2)を他に優先して選好する場合には、均衡解は状態8である(シナリオ1)。これは、決定が行き詰まり、共同選果場の統合へと向かわない状況に対応している。このとき、コンフリクトの局面を変えるためには、「農協」の選好順序が変わる必要がある。そこで、「農協」が選好順序を、「生産者」との意見一致(2≡3)を優先して決定した場合を検討すると、状態11が均衡解として求められる(シナリオ2)。これは、選果場の統合へ向けて動き出した状況と対応している。
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成果の活用面・留意点 |
- 利害関係者が複数の場合の様々な意思決定を分析するために活用できる。その際、考えられる多くのシナリオの作成と分析を繰り返し実施することが重要である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
管理システム
出荷調整
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