タイトル | コムギ品種「ゆきちから」は登熟後期にも赤かび病病斑が伸展しやすい |
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担当機関 | 宮城古川農試 |
研究期間 | 2004~2008 |
研究担当者 |
畑谷みどり 大場淳司 笹原剛志 |
発行年度 | 2004 |
要約 | コムギ品種「ゆきちから」は「シラネコムギ」に比較し、赤かび病に対する伸展抵抗性が弱く、登熟後期にも急激に病勢が進展する。そのため、粒厚の大きな赤かび粒の混入する割合も高い。 |
キーワード | 赤かび病、コムギ、ゆきちから、シラネコムギ、伸展抵抗性 |
背景・ねらい | 食品安全の面から厚生労働省は麦類赤かび病菌の産生するDON(デオキシニバレノール)の暫定基準値をコムギでは1.1ppmに設定し、同時に食用麦の赤かび混入限界が農産物検査基準で0.0%以下に定められた。そのため、粒厚選別により赤かび粒の除去を試みているが、品種によって被害粒を十分除去できない場合がある。近年、パン用コムギの需要が高まっているが、同時に赤かび病に対する抵抗性の弱さも指摘されており、平成16年より宮城県の奨励品種としたパン用コムギ「ゆきちから」も同様の傾向を示し、粒厚選別によっても赤かび粒の混入割合が減少しない。そこで、本品種の病勢進展経過を検討し、被害粒低減対策のための資料を得る。 |
成果の内容・特徴 | 「ゆきちから」は「シラネコムギ」より、伸展抵抗性が登熟期全般にわたり弱く、登熟後期にも感染穂内の発病小穂が急増し、発病度が高くなる(図1)。また、登熟後期に感染した場合でも伸展抵抗性が弱く発病度が高くなる(図2)。「ゆきちから」は「シラネコムギ」より、赤かび粒の混入率が高い。(図3)また、「シラネコムギ」では粒厚選別による篩い目を2.6mm以上にすると、赤かび粒は急激に減少するが、それに比較して「ゆきちから」での減少程度は低い。(図4) |
成果の活用面・留意点 | 当調査では赤かび被害粒として、農産物規格規定における「赤かび病菌等に侵されて赤色を帯びた粒」の他に、「脱色して白い粒」および「しわ粒」も含めた。ここでは一般的に、経時的に病勢が進行し発病度が上がることを「病勢進展」、コムギ組織内における菌糸成長の抑制効果を「伸展抵抗性」と表現した。「ゆきちから」のように登熟後期に病勢が進展する品種については、防除時期について再検討する必要がある。赤かび病が多発した際の対処法として、収穫時にコンバインの風圧を高めたり、調整時に粒厚選別と同時に揺動式選別を行うことで被害粒の混入率を抑えた事例がある。病原菌の同定およびマイコトキシンの濃度については未検討である。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
カテゴリ | 病害虫 しわ粒 抵抗性 品種 防除 |