タイトル |
耐冷性・耐病性に優れる良質・良食味水稲新品種候補「岩手68号」の採用 |
担当機関 |
岩手農研セ |
研究期間 |
2002~2006 |
研究担当者 |
臼井智彦
及川あや
高橋政夫
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発行年度 |
2004 |
要約 |
「岩手68号」は岩手県では“中生の中”の粳系統である。耐冷性・穂いもち圃場抵抗性は「あきたこまち」より強く、多収である。品質・食味は「あきたこまち」と同等であり、耐冷性・耐病性に優れる良食味品種として奨励品種に採用する。
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キーワード |
イネ、岩手68号、耐冷性、穂いもち圃場抵抗性、品質、食味
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背景・ねらい |
岩手県における中生の主力品種である「あきたこまち」は耐冷性が弱く、冷害時には障害不稔が多発し、作柄を低下させる要因となっている。特別栽培米等の取り組みが拡大しているが、「ひとめぼれ」や「あきたこまち」はいもち病耐病性が劣り、病害が多発する危険性を有している。 そこで、強い耐冷性と穂いもち圃場抵抗性を有した良質・良食味系統「岩手68号」を奨励品種に採用し、より一層の高品質生産と作柄の安定を図る。
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成果の内容・特徴 |
- 「岩手68号」は1996年に旧岩手県農業試験場県南分場(江刺市)において、「岩南7号」を母、「ふ系179号」を父として人工交配を行った後代から育成された。
- 出穂期・成熟期は「あきたこまち」よりやや遅く、「ひとめぼれ」より早い“中生の中”に属する(表1)。
- 稈長は「あきたこまち」より短く、穂長は長い。穂数は「あきたこまち」より少ない(表1)。
- 耐倒伏性は「あきたこまち」より強い(表1)。
- 千粒重が「あきたこまち」より重く、収量性は「あきたこまち」より多収である(表1)。
- 玄米の外観品質は白未熟粒の発生が少なく、「あきたこまち」と同等に優れる(表1)。
- 食味は優れ「あきたこまち」並である。炊飯米の特徴は、「あきたこまち」ほど粘りは強くないが、飯粒の形がしっかりとしてつぶれにくく、適度な弾力があり、バランスのとれた食感を有する。(図1)。
- 葉いもち圃場抵抗性は“やや弱”であるが、いもち病真性抵抗性遺伝子型が“Pii,Pik”であることと、穂いもち圃場抵抗性が“強”であることから、いもち病多発圃場においても穂いもちの発生はきわめて少ない(表2)。
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成果の活用面・留意点 |
- 耐冷性、穂いもち圃場抵抗性を活かし、中生品種の作柄の安定化及び特別栽培米の品質・収量の安定化を図る。
- 栽培適地は、盛岡以南の北上川流域標高100~200m及び宮古以南の沿岸部標高100m以下の約23,000haであり、普及見込み面積は、特別栽培米生産を中心とした3,000haである(図2)。
- 多肥栽培では食味・品質が低下する恐れがあるので、当面基肥は「あきたこまち」並とし、追肥は幼穂形成期を重点とする。
- 葉いもち圃場抵抗性が“やや弱”のため、葉いもちの防除を実施する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
病害虫
いもち病
新品種
水稲
抵抗性
抵抗性遺伝子
凍害
品種
防除
良食味
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