タイトル |
耐冷性が強い良質紫黒粳米新品種「青系紫153号」の育成 |
担当機関 |
青森農林総研 |
研究期間 |
1994~2006 |
研究担当者 |
横山裕正
舘山元春
高舘正男
今智穂美
三上泰正
小林健一
小林渡
川村陽一
前田一春
中堀登示光
|
発行年度 |
2007 |
要約 |
「青系紫153号」は、“中生の早”で耐冷性が“強”の紫黒粳米で、玄米はアントシアン系の濃い紫色を呈し、赤飯などのほか玄米パンや菓子類、酒類などの加工食品等に利用できることから、青森県の認定品種に指定された。
|
キーワード |
イネ、青系紫153号、紫黒粳米、認定品種、障害型耐冷性、良質
|
背景・ねらい |
青森県の紫黒米は県南地域を中心に1ha程度作付されているが、多くは糯種の「朝紫」で粳種の作付はない。利用者からは菓子・パン類や酒などの加工に向く粳種の紫黒米品種が要望されているが、既存の粳種の「おくのむらさき」は熟期が遅く耐冷性が弱いことから、青森県に適した熟期で耐冷性の強い粳種の紫黒米品種を育成する。
|
成果の内容・特徴 |
- 「青系紫153号」は、中生の耐冷・耐病・紫黒粳米品種の育成を目標に、1994年に「奥羽糯349号(朝紫)」を母、「ふ系176号」を父として人工交配を行い、その後代から育成された品種である(表1)。
- 出穂期は「むつほまれ」より1日程度早く、成熟期が「むつほまれ」並みからやや遅く、育成地では“中生の早”に属する粳種である(表1)。
- 稈長は「むつほまれ」より長く「おくのむらさき」並みの“中稈”で、「むつほまれ」に比べ穂長はやや長く、穂数がやや少なく、草型は“偏穂重型”である。耐倒伏性は「むつほまれ」よりやや弱い“やや強”である。籾には短芒を中程度生じ、ふ先色は“紫”である(表1)。また、幼苗期から成熟期にかけて葉縁、葉舌、葉鞘、稈、節等が紫色を呈する。
- 障害型耐冷性は、「むつほまれ」「おくのむらさき」より強い“強”である。いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pia”と推定され、圃場抵抗性は葉いもちは「むつほまれ」より強い“極強”、穂いもちが「むつほまれ」より弱い“やや弱”である。穂発芽性は「むつほまれ」より発芽しにくく、「おくのむらさき」並みの“極難”である。収量性は「むつほまれ」より低く、「おくのむらさき」並みである(表1)。
- 玄米の形はやや細長い“半紡錘形”、粒大は“小”、玄米千粒重は19g程度で「むつほまれ」より小さい。玄米は果皮がアントシアン系の濃い紫色(暗紫)を呈し、玄米品質は「おくのむらさき」より優る“上下”である(表1)。
- 白米に紫黒米を混米した赤飯では、「おくのむらさき」の混米より色が濃い(表2)。
|
成果の活用面・留意点 |
- 赤飯などの各種調理飯のほか、粳種としての特徴を活かした玄米パン、菓子類、酒類などの加工食品等に利用できる。
- 穂発芽性が“極難”で休眠が深いと考えられるので、播種前の種子の浸漬は十分に行う。
- 播種量は、籾千粒重が小さいので10%程度減ずる。
- 穂いもち圃場抵抗性が“やや弱”のため、適期防除に努める。
- 玄米はやや細長く千粒重が小さいので、玄米選別は原則として1.7mmの篩目で行う。
- 収穫調製時の一般米への混入や近隣に作付けされた品種との交雑には特に注意する。乾燥機、籾摺機は一般米と別にすることが望ましく、また、当該品種を作付した圃場に翌年別の品種を栽培する場合は、こぼれ種子の生育に十分注意し、適宜抜き取るようにする。
|
図表1 |
|
図表2 |
|
カテゴリ |
病害虫
いもち病
加工
乾燥
新品種
抵抗性
抵抗性遺伝子
播種
品種
防除
|