タイトル |
壮年層を対象とした農村女性起業の育成支援方策 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター |
研究期間 |
2006~2007 |
研究担当者 |
澁谷美紀
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発行年度 |
2007 |
要約 |
壮年層の起業の促進には、関連機関が自らの広報手段を活用して起業動機を持つ人材を発掘・組織化するとともに、経営理念の明確化や商品開発・店舗運営法習得を目的とした実践性の高い組織活動を支援することによって、人材育成を図ることが重要である。
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キーワード |
農村女性起業、壮年層、人材の発掘・組織化、人材育成
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背景・ねらい |
農村女性起業(以下、起業)は雇用創出や特産品開発等の地域活性化効果を持つ。特に、壮年層(40~50歳代)の起業は高年層(60歳代以上)の起業に比べて構成員1人当たりの売上(以下、売上)が多く、地域活性化効果が大きい。こうしたなか、起業の6割を超えるグループ経営では、従来からJA女性部や農村生活研究グループ(以下、生活研究グループ)等の既存の地域組織が主な起業母体となってきた。しかし、壮年層のライフコースが農業から農外就業へと転換したことから、これら既存組織の活動の停滞化、起業者の高齢化が進み、旧来とは異なる起業の支援策が求められている。そこで、東北地域において売上の多い壮年層の起業事例から、グループ経営における起業の育成支援方策を解明する。
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成果の内容・特徴 |
- 事業内容や経営形態を問わず、起業に必要とされる要件には、「経営知識の習得」「起業施設の整備」「起業パートナーの確保(起業母体)」「事業シーズの獲得」「起業への動機づけ」の五つがある。に、1)起業母体(既存組織か新設組織か)と2)起業への動機づけ(外発的か内発的か)の起業要件については起業事例によりその充足過程に違いがある(表1)。これらの相違点に着目すると、起業は、A.既存組織母体・外発型、B.既存組織母体・内発型、C.新設組織母体・内発型の三つに分類できる(表2)。
- 各類型で起業までのプロセスは異なる(図1)。A、Bでは、技術力や人望を身につけた既存組織のリーダーが、事業シーズや起業パートナーを得て起業に至っている。これに対しCでは、起業動機を持ち既存組織に所属しない女性が、自ら関連機関に働きかけ、起業母体となる組織の結成や活動、施設整備での支援を得て起業に至っている。
- 壮年層のライフコースが農業から農外就業へと転換し、従来のような既存組織を母体とする起業が難しくなっていることから、Cの起業の育成支援が、今後特に重要である。Cの起業の促進には、既存組織のリーダー以外の農村女性をも視野に入れ、起業を目指す人材を発掘・組織化する必要がある。また、Cの起業リーダーは、A、Bの起業リーダーと異なり、起業パートナーの基盤や事業シーズの源泉となる既存組織での活動経験に乏しいことから、それらの経験を補うための組織活動を支援する必要がある。
- 人材の発掘や組織化のための構成員の募集には、関連機関の広報手段の活用が有効である。また、組織活動では、経営理念の明確化や消費者ニーズに基づく商品開発・店舗運営法の習得が求められる。そのためには、1)他起業の運営状況や組織作りの研修、2)地元食材や伝統食の見直し等から事業シーズを探索する学習、3)消費者や専門家の助言に基づく試食会や模擬販売の実習など、実践性の高い活動への支援が重要である。
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成果の活用面・留意点 |
市町村やJAがグループ経営の起業を促進する際の具体的な支援策として活用できる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
経営管理
人材育成
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