タイトル |
直播栽培に適する稲発酵粗飼料専用新品種「うしゆたか」の育成 |
担当機関 |
青森農林総研 |
研究期間 |
1988~2007 |
研究担当者 |
横山裕正
舘山元春
高舘正男
今智穂美
三上泰正
小林健一
小林渡
川村陽一
前田一春
|
発行年度 |
2008 |
要約 |
水稲「うしゆたか」は、青森県で熟期が“中生の早”の粳種である。耐倒伏性が強く直播適性があり、黄熟期の全重収量が高く稲発酵粗飼料としての特性も優れていることから、青森県の飼料作物奨励品種に指定され、今後の普及が見込まれる。
|
キーワード |
飼料イネ、稲発酵粗飼料、うしゆたか、飼料作物奨励品種、直播適性
|
背景・ねらい |
国際的な穀物価格の高騰による輸入飼料の価格上昇は、畜産経営に深刻な影響をもたらしている。このため、飼料の自給生産を拡大する観点から、水田で生産できる飼料イネが注目されている。青森県では飼料用として稲発酵粗飼料の生産が年々増加しているが、ほとんどを食用品種で代用しているのが現状である。そこで、青森県に適する低コスト生産が可能な稲発酵粗飼料専用品種を早期に育成する。
|
成果の内容・特徴 |
- 「うしゆたか」は、青森県に適する耐転び型倒伏性を備えた直播向け品種の育成を目標に、1998年に「青系125号(ゆめあかり)」を母、「つ系995」を父として人工交配を行い、その後代から育成された品種である(表1)。
- 出穂期は「むつほまれ」並みで育成地では“中生の早”に属する。黄熟期は「むつほまれ」より4日程度早く、成熟期は6日程度早い(表1)。
- 稈長は「むつほまれ」より長い“中稈”で、穂長は長く、穂数は少なく、草型は“穂重型”である。稈の太さは“極太”で、耐倒伏性は“極強”である(表1)。
- いもち病抵抗性は、真性抵抗性遺伝子“Pii”と“Pib”を併せ持つと推定され、圃場抵抗性は葉いもちが“やや強”、穂いもちは“不明”であるが、DNAマーカー検定(RM206:Cornell SSR map 2001、早野ら育学研5別1 2003)により高度穂いもち圃場抵抗性遺伝子“Pb1”を保有すると推定される。障害型耐冷性は“中”、穂発芽性は“難”である(表1)。
- 黄熟期における全重収量(地上部乾物重)は「むつほまれ」より多く、倒伏程度は少ない。湛水直播栽培における苗立ち率は「むつほまれ」並みである(表1)。
- 成熟期における玄米収量は「むつほまれ」より少なく、玄米千粒重は「むつほまれ」より重い。玄米品質は“中中”である(表1)。
- 飼料成分は、TDN含量は「むつほまれ」並みであるが、粗繊維含量が低く消化が良いため、採食量増加が期待できる。また、リン酸、石灰、苦土含有率が高く、K/(Ca+Mg)当量比が低いため、無機成分組成が優れる(表2)。
|
成果の活用面・留意点 |
- 栽培適地は青森県全域で、150ha程度の普及が見込まれる。 熟期がややばらつくので、収穫は側面が黄色味を帯びた果実から順に2~3回に分けて行う。
- 転作田や遊休田等で作付し耕畜連携することで、水田の有効利用と飼料自給率の向上が期待される。
- 種量は、籾千粒重が重いので15%程度増やす。
- 発酵粗飼料の安定した収量と栄養価を得るために、黄熟期に収穫を行う。
- 使用可能な農薬が限られるため、使用にあたっては「稲発酵粗飼料生産・給与技術マニュアル」を参照する。
|
図表1 |
 |
図表2 |
 |
カテゴリ |
病害虫
いもち病
経営管理
直播栽培
飼料作物
飼料用作物
新品種
水田
水稲
DNAマーカー
抵抗性
抵抗性遺伝子
低コスト
農薬
ばら
品種
|