イネがもつ33種類のアクアポリン遺伝子とその発現部位

タイトル イネがもつ33種類のアクアポリン遺伝子とその発現部位
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター
研究期間 2005~2006
研究担当者 櫻井淳子
山口知哉
上村松生(岩手大連大)
前島正義(名古屋大生命農)
櫻井淳子
発行年度 2008
要約 イネは水の輸送に関わる膜タンパク質アクアポリンの遺伝子を33種類持つ。このうち3種類が主に葉身で、6種類が主に根でそれぞれ発現し、10種類は葉身と根の両方で発現している。残りの14種類は葉身と根においてほとんど発現しない。
キーワード イネ、アクアポリン、発現
背景・ねらい 寒冷地の水稲作では、育苗期、移植から活着期あるいは直播栽培の苗立ち期に低温による生育障害がしばしば発生して大きく減収する。低温による生育不良や吸水障害が、その原因のひとつであると指摘されている。一方、水を通す膜タンパク質アクアポリンが作物の生育や吸水に対して果たす役割が解明されつつあり、アクアポリンをターゲットとした分子育種を行う等の応用的手法によりイネにおける上記の障害回避技術の飛躍的進歩が期待される。ところが、イネに何種類のアクアポリン分子種が存在するか、またどの分子種がどの器官で発現しているのか、という基礎的事項が未解明である。そこで、イネゲノムデータベースからイネアクアポリン遺伝子を同定するとともに、根や葉身での発現について検討する。
成果の内容・特徴
  1. 日本晴のイネゲノムデータベースを探索した結果、イネには33種類のアクアポリン遺伝子が存在する。細胞膜型が11 種類、液胞膜型が10 種類、NIP, SIP と呼ばれるグループがそれぞれ10及び2種類である。(表1)。
  2. 幼苗(日本晴、あきたこまち)を用いた解析により、33 種類のアクアポリンのうち3種類(OsPIP2;7、OsTIP1;2、OsTIP4;3)は葉身で、6種類(OsPIP1;3、OsPIP2;3、OsPIP2;4、OsPIP2;5、OsTIP2;1、OsNIP2;1)は根で、それぞれ発現している。10 種類(OsPIP1;1、OsPIP1;2、OsPIP2;1、OsPIP2;2、OsPIP2;6、OsTIP1;1、OsTIP2;2、OsNIP3;1、OsSIP1;1、OsSIP2;1)は葉身と根の両方で発現している(表1及び図1)。その他の14種類のアクアポリンは、葉身と根での発現が少ない。
成果の活用面・留意点
  1. イネアクアポリン遺伝子は、日本晴のゲノムデータベースより同定しており、インディカや他のイネ品種では異なるアクアポリン遺伝子が存在する可能性がある。
  2. イネゲノムデータベースからの探索結果では、他にもアクアポリン遺伝子の候補と考えられる遺伝子が複数存在するが、これらは「2つのNPAモチーフや6つの膜貫通領域を持つ」等のアクアポリンの基本的構造を満たしてしていないので、本成果に含めていない。
  3. 本成果は、人工気象室内で環境ストレス等は与えずに水耕栽培した場合の結果であり、栽培条件によっては今回発現が見られなかったアクアポリンが根や葉身で発現する可能性がある。
  4. 本成果で同定された33個のアクアポリン遺伝子全てが水輸送活性を持つアクアポリンとしてイネ体内で機能しているかどうかについては、別途検討が必要である。
図表1 232900-1.png
図表2 232900-2.png
図表3 232900-3.png
図表4 232900-4.png
カテゴリ 育種 育苗 栽培条件 直播栽培 水稲 水耕栽培 データベース 品種 輸送

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