タイトル |
経済的インセンティブを考慮した省耕起栽培による温室効果ガス削減効果 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター |
研究期間 |
2006~2009 |
研究担当者 |
中島隆博
|
発行年度 |
2009 |
要約 |
省耕起栽培による温室効果ガス削減量は、経済的インセンティブを考慮した場合、慣行栽培比で1.7%(CO2換算)にとどまる。技術的な削減ポテンシャル(3.8~18.1%)を生かすには、3,000円/t CO2eq以上の追加的インセンティブが必要である。
|
キーワード |
実証的数理計画法、ライフサイクルインベントリ分析、温室効果ガス、省耕起栽培、土壌炭素固定
|
背景・ねらい |
ポスト京都議定書における温室効果ガス削減の取り組みとして農地管理を含めることが検討されており、省耕起栽培は土壌炭素固定効果を有する対策技術の1つとして注目されている。しかし、省耕起栽培の普及により温室効果ガス削減をどの程度まで実現できるかは農業経営をめぐる経済条件に依存する。そこで、従来の環境影響評価手法と経営評価手法を統合した評価手法を用いることにより、経済的インセンティブによる省耕起栽培の普及とそれによる温室効果ガス削減効果を明らかにする。
|
成果の内容・特徴 |
- 線形計画法と2次計画法を組み合わせた実証的数理計画法により、作付体系の再現性を確保し、経営モデルとライフサイクルアセスメントと統合した。これにより、環境保全と農業経営収益の同時分析が可能になった(図1)。
- 北海道十勝平野における大規模畑作生産システム(秋まき小麦・甜菜・馬鈴薯・小豆・キャベツ)に関するライフサイクルインベントリデータ(Koga et al. SSPN2006)を経営指標(北海道農業生産技術体系)とA経営における慣行栽培の作付面積にリンクして農業経営モデルを作成した。その後、表1に示すような農業経営費と労働時間の変化を伴う省耕起栽培(秋まき小麦・甜菜・小豆)の導入可能性を分析した。
- 分析の結果、現状の経済条件下における省耕起栽培導入は一部にとどまった。経営システム全体からの温室効果ガス排出量は慣行栽培体系との比較で1.7%減(CO2換算)にとどまり(表2)、省耕起栽培のもつ技術的な排出削減ポテンシャル(3.8%甜菜~18.1%秋まき小麦)をかなり下回った(表1、2)。この技術的ポテンシャルを生かし、温室効果ガス排出量の削減を促進するためには、生産者に対する追加的インセンティブの導入が必要である。
- 省耕起栽培導入を促進する経済的インセンティブの一例として、温室効果ガス削減量に比例する定率補助金支払いを想定したところ、3,000〔円/t CO2eq〕以上で温室効果ガス削減効果が表れ、慣行栽培のみの体系と比べて6.8%の温室効果ガス排出削減が可能との試算結果を得た(表2)。
|
成果の活用面・留意点 |
- 今回は開発した手法をライフサイクルインベントリデータの整備が進んでいる大規模畑作地帯に適用したが、インベントリデータの整備により、有機農業生産やバイオマス生産をはじめとする生産システム設計一般に適用可能である。
- 社会的に望ましい経済的インセンティブの整備にあたっては、温室効果ガスのみならず富栄養化や酸性化等の環境影響評価を行うと共に公的負担に関する費用便益分析を行う必要がある。
|
図表1 |
|
図表2 |
|
図表3 |
|
カテゴリ |
有機農業
有機栽培
キャベツ
経営管理
経営モデル
小麦
栽培体系
|