米脂肪顆粒膜分解酵素の欠失変異体の単離とその選抜DNAマーカー

タイトル 米脂肪顆粒膜分解酵素の欠失変異体の単離とその選抜DNAマーカー
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 作物研究所
研究期間 2004~2009
研究担当者 鈴木保宏
白澤健太
竹内善信
発行年度 2009
要約 脂肪貯蔵顆粒膜を分解するホスホリパーゼD(PLD)が欠失する変異体、「03s-108」が有するPLD欠失性は、劣性の一遺伝子に支配される。開発したDNAマーカーを用いることにより、PLDが欠失したイネを簡易に選抜できる。
キーワード ホスホリパーゼD欠失、米油、低コスト貯蔵、選抜技術、DNAマーカー
背景・ねらい 米ヌカには風味成分や栄養成分が豊富に存在するが、劣化しやすい欠点を有する。その原因は、ホスホリパーゼD(PLD)による脂肪貯蔵顆粒膜の分解を初期反応とする、一連の脂質の分解酸化に帰因すると考えられている。従ってこの劣化が抑制されれば米油の歩留まりが向上するばかりでなく、米の貯蔵性の向上や玄米全粒粉の利用促進につながることが期待される。そこで、玄米中のPLDが欠失した系統を作出するとともに、PLDの有無を簡易に判別できるDNAマーカーの開発を試みる。
成果の内容・特徴
  1. 玄米中のPLDが欠失した突然変異体「03s-108」は、ND0052(日本晴のTos17挿入変異体)種子に突然変異原処理を行い、抗PLD抗体を用いて4,300 M1株より選抜したものである。03s-108では、ヌカ中のPLDタンパク質とPLD酵素活性がともに欠失している(図1)。
  2. 03s-108とコシヒカリとを交配したF2種子中のPLDタンパク質の有無は、有:無が3:1に分離する。従って、03s-108の有するPLDタンパク質の欠失性は、一つの劣性遺伝子に支配される(表1)。
  3. マイクロサテライトマーカーによる連鎖分析結果は、種子PLDタンパク質をコードする遺伝子は第1染色体のRPLD1であることを示している。日本晴のRPLD1遺伝子においてトリプトファンを指定するコドン「TGG」が、PLD欠失米変異体03s-108では一塩基置換により終止コドン「TGA」へ変異するナンセンス変異となっている(図2)。以上の理由から、03s-108ではPLDタンパク質が作られない。
  4. 見出した終止コドンへの一塩基置換を利用するDNAマーカー検出方法を用いることにより、苗の葉1枚でPLDタンパク質の有無を判別できる。CAPS法によると、一塩基変異を含む領域のPCR産物を制限酵素PsrIで処理することにより、DNAの塩基配列の違いを検出できる(図3)。また、ドットブロットSNP法により一塩基の違いを点のシグナルとして判定でき、大量の試料を解析することができる。
成果の活用面・留意点
  1. 03s-108種子は、(独)産総研特許生物寄託センターに寄託されている(受託番号FERM P-21231)。
  2. Kli本DNAマーカーを利用することにより、簡単な操作でPLD欠失イネ品種の早期選抜ができ、品種育成の効率化が期待される。
図表1 233780-1.png
図表2 233780-2.png
図表3 233780-3.png
カテゴリ DNAマーカー 低コスト 品種

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