堆肥・飼料中のクロピラリドのLC/MS/MSを使用した定量方法

タイトル 堆肥・飼料中のクロピラリドのLC/MS/MSを使用した定量方法
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所
研究期間 2006~2008
研究担当者 上垣隆一
江波戸宗大
須藤まどか
佐藤 強
発行年度 2009
要約 堆肥・飼料中のクロピラリドは、LC/MS/MSを使用することで精度良く定量でき、詳細な動態解析に利用できる。
キーワード クロピラリド、堆肥、LC/MS/MS、園芸作物
背景・ねらい トマト等の園芸作物の栽培において異常生育が発生する事例が全国的に報告され、その原因は、日本国内では農薬として登録されていないホルモン型除草剤クロピラリド(3,6-dichloropyridine-2-carboxylic acid)によるものであると特定されている。クロピラリドは、輸入粗飼料を介して日本国内に侵入し家畜を経て堆肥に混入したと推定されているが、詳細な動態は不明であることが、被害発生防止のための有効な措置を講じることを困難としている。
動態解析には、定量分析が必要不可欠であるが、堆肥や飼料(原物)を想定した分析法は確立されていない。クロピラリドによる被害が確認された堆肥を、「食品に残留する農薬、飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法-クロピラリド試験法(農産物)」(厚生労働省医薬食品局食品安全部)にて分析をすると検出されなかった(検出限界50μg/kg)事例が生じたことから、堆肥や飼料中の濃度をより検出下限値が低くかつ適正に反映する定量方法が求められている。そこで、堆肥・飼料中のクロピラリドの定量法(定量下限値10μg/kg以下)の確立を行なう。その上で、生産現場における濃度推定法として確立されている「サヤエンドウを用いたクロピラリドの生物検定法」による推定値との比較を行い、確立した定量方法が、適正であるかの検証を行う。
成果の内容・特徴
  1. 堆肥・トウモロコシからのクロピラリドの抽出・前処理方法(図1)と、LC/MS/MSでのクロピラリド測定条件例を示す(表1、図2)。本手法での堆肥への添加回収実験(1mg/kg原物 添加)の結果は82%(n=4、変動係数0.21)、トウモロコシへの添加回収実験(100μg/kg原物 添加)の結果は98%(n=3、変動係数0.09)である。定量下限値(S/N>10となる値)は、堆肥で5μg/kg原物、トウモロコシでは2μg/kg原物である。
  2. クロピラリドの混入が確認されている堆肥を、1.の定量方法にてクロピラリド濃度が73μg/kg原物(n=4, 標準誤差=3.9)であるとされたクロピラリド混入堆肥を、既に開発されている生物検定(サヤエンドウを用いたクロピラリドの生物検定法(佐藤ら、平成19年度研究成果情報[関東東海・土壌肥料])を行なうと障害指数は1.8で、当該指数から推定した堆肥中のクロピラリド濃度は80μg/kg原物である(図3)。両者の値は一致し、実際の堆肥中のクロピラリド濃度を適正に反映していると認められる。
成果の活用面・留意点
  1. 本手法は乾燥することなく堆肥、飼料原物中の濃度を定量できる。
  2. 実際のクロピラリド混入濃度を反映している方法なので、クロピラリドによる農産物の被害発生防止のための詳細な動態解析に使用できる。また、「飼料及び堆肥に残留する除草剤の簡易判定法と被害軽減対策マニュアル」と併せ、クロピラリドの被害の防止に活用できる。
  3. サヤエンドウを用いた生物検定法は、クロピラリドの濃度が高いほど下葉から変形し、かつ変形程度が大きくなることを利用したクロピラリド残留濃度を推定する方法である。クロピラリドの標準品を段階的に添加した培養土を用いてサヤエンドウをポット栽培し、発生する障害の程度を「障害指数」として数値化しこの値を用いて検量線を作成する。サヤエンドウに対する障害の程度で判定するため、クロピラリドによる被害の可能性を正確に判定できる反面、他の薬剤の混入等でサヤエンドウに対する障害が生じた場合に、クロピラリドによるものか否かを判定できない。生物検定と機器分析を相補的に行うことでクロピラリド以外の生理活性物質の定量方法の開発に応用できる。
図表1 233895-1.jpg
図表2 233895-2.jpg
図表3 233895-3.jpg
図表4 233895-4.jpg
カテゴリ 肥料 病害虫 乾燥 さやえんどう 除草剤 生物検定法 とうもろこし 土壌管理技術 トマト 農薬 薬剤

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