タイトル |
キシラン分解活性を持つ新科の高度好熱嫌気性細菌 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 |
2007~2008 |
研究担当者 |
横山 浩
Isaac D. Wagner
Juergen Wiegel
田中康男
石田三佳
荻野暁史
山下恭広
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発行年度 |
2009 |
要約 |
ヘミセルロースの成分であるキシランを分解する新しい高度好熱嫌気性細菌を羊ふんから単離した。本細菌はCaldicoprobacter oshimaiと命名され、新科(新種・新属に次ぐ三番目の上位分類)として国際原核生物分類命名委員会に認定されている。
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キーワード |
嫌気性細菌、好熱細菌、キシラン、家畜ふん
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背景・ねらい |
畜ふんに中温菌や至適増殖温度を45-60℃に持つ中度好熱嫌気性細菌が含まれていることは広く知られている。我々は、畜ふんに至適増殖温度を65℃以上に持つ高度好熱細菌が存在している知見を初めて得たことから、その新規細菌を単離・解析して生理学的および系統分類学的な特徴を解明する。
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成果の内容・特徴 |
- ジョージア大学の農場で排泄直後に採取された羊ふんを種菌、キシランを基質として嫌気的に74℃で集積培養して、ロールチューブ法で細菌株JW/HY-331Tを単離した。
- その菌株は、温度44-77℃(至適70℃)(図1)、pH5.9-8.6(至適7.2)で増殖可能あり、絶対嫌気性で塩濃度耐性は2%である。カタラーゼとオキシダーゼ活性はない。
- 形態は桿体(直径0.4-0.5μm、長さ4-14μm)で、死滅期には胞子を形成する(図2)。運動性はない。
- 細胞壁は1重膜であり(図3)、グラム染色陽性、細胞壁のペプチドグリカンタイプはA1γ、細胞壁糖類はガラクトースとマンノースである。
- キシランに加えてグルコース、セロビオース、ラクトースなども資化できるが、セルロース分解活性はない。グルコース1モルあたりの発酵産物は、およそ0.6モルの乳酸、0.3モルの酢酸、0.5モルのエタノール、0.8モルの二酸化炭素、0.4モルの水素である。硝酸イオンや硫酸イオンなどを利用した嫌気呼吸をしない。独立栄養増殖をできない。
- ゲノムのGC含量は45.4 %モル、主要な脂質成分は炭素数15と17の枝分かれ飽和脂肪酸であり、キノン類は検出されない。
- 16S rDNA配列からJW/HY-331T株と最も類似性を示す細菌は'Catabacter hongkongensis'であり、その相同性は85.4%である(図4)。近縁種との相同性が90%以下であることや、上記の生理学的・化学組成的な特徴から、単離された細菌は新科(新種、新属に次ぐ3番目の分類位)であると国際原核生物分類命名委員会が認定している。そこで単離された細菌の学名をCaldicoprobacter oshimai、その新科名をCaldicoprobacteraceaと命名する。CaldicoprobacteraceaeはClostridiales目に属する。
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成果の活用面・留意点 |
- 高温条件下でのバイオマス中のキシラン分解や新規耐熱性キシラナーゼ遺伝子の単離源として利用できる。
- 本菌株はアメリカの細胞バンクATCCとドイツの細胞バンクDSMZに寄託され、非営利目的で自由に利用できる(菌株番号:BAA-1711、DMS 21659)。
- Caldicoprobacter oshimaiは畜産草地研究所で飼育されている乳牛のふんでも検出されており、世界中の草食動物のふんに存在している可能性がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
乳牛
羊
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