タイトル |
黒毛和種肥育牛の仕上げ期における玄米と食品残さによる配合飼料代替給与法 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター |
研究期間 |
2008~2009 |
研究担当者 |
神谷 充
佐藤健次
服部育男
中村好徳
常石英作
上村昌志
|
発行年度 |
2009 |
要約 |
玄米、カンショ焼酎粕濃縮液、乾燥豆腐粕などを混合した発酵飼料を大型の黒毛和種去勢牛の仕上げ期5ヵ月間に乾物ベースで配合飼料の60%程度代替給与しても、良好な枝肉成績が得られる。
|
キーワード |
黒毛和種、肥育、玄米、カンショ焼酎粕、乾燥豆腐粕、枝肉成績
|
背景・ねらい |
飼料自給率向上のために、肉用牛の肥育期濃厚飼料においても飼料用米の活用が推進されている。また、資源の有効利用も目的に食品残さの活用が望まれている。飼料用米と低コストの食品残さを組み合わせることで、自給率の高い肥育用飼料を調製できるが、給与事例は報告されていない。また、カンショ焼酎粕濃縮液の給与が枝肉成績に及ぼす影響は不明で、特に肥育末期に仕上がるきめ・締まりなど肉質への影響が懸念される。そこで、本情報は飼料自給率の向上を目指したもので、玄米(飼料用米)、カンショ焼酎粕濃縮液、乾燥豆腐粕などを混合した発酵飼料を黒毛和種肥育牛の仕上げ期に給与し、枝肉成績に及ぼす影響を調べる。
|
成果の内容・特徴 |
- 玄米(無破砕)30%、カンショ焼酎粕濃縮液30%、乾燥豆腐粕11.5%を含む発酵飼料(表1)は、配合飼料よりもTDN含量が低く、CP含量が高いが、黒毛和種去勢牛(平均月齢23ヵ月、肥育開始後15ヵ月)の仕上げ期5ヵ月間の配合飼料摂取量の60%程度(乾物ベース)代替する飼料設計が可能である(表2、表3)。
- 試験区と対照区で乾物、TDN、CP、NDF、ADFおよびデンプン摂取量に差はなく、日増体量も差は認められない(表3)。なお、給与4ヵ月後の血漿中成分値(中性脂肪、総コレステロール、総蛋白、アルブミン、尿素窒素、γ-GTP、GOT、GPT、ビタミンA、カルシウム、リン、マグネシウム、カリウム)は正常範囲であり、問題は認められない。
- 試験区と対照区で枝肉重量、胸最長筋面積、ばらの厚さ、皮下脂肪の厚さに差はなく、歩留まりに影響はない(表3)。またBMS、BCS、光沢、締まり、きめ、BFS、光沢と質に差はなく(表3)、ロース芯の粗脂肪含量、脂肪酸組成、脂肪融点にも差はない。
- 枝肉の格付けは試験区でA5が1頭、A4が5頭であり、対照区でA5が1頭、B5が1頭、A4が3頭、A2が1頭であり、発酵飼料を代替給与しても良質な肉質となる(図1)。
|
成果の活用面・留意点 |
- この成果は大規模肥育農家における実証試験の結果であり、飼料用米と食品残さによる自給飼料肥育を目指す生産者やTMRセンターが、大型の黒毛和種去勢牛の仕上げ期の飼料調製給与技術として活用できる。なお、仕上げ期以外の給与効果は未確認である。
- カンショ焼酎粕濃縮液は通年または一定期間供給されるが、原材料や処理方法の違いにより、工場毎で飼料成分値は異なる。なお、本成果に用いたカンショ焼酎粕濃縮液は、芋焼酎の蒸留廃液を遠心分離で固液分離し、分離液を減圧条件で加熱濃縮したものであり、流動性が高いため、飼料混合時は一般的な飼料用攪拌機で均一に混合できる。
- カンショ焼酎粕濃縮液を混合して発酵貯蔵した飼料には飼料の変敗抑制効果が期待されているが、開封後は早めに給与するのが望ましい。なお、発酵貯蔵しない場合は変敗が早いため、留意する必要がある。
|
図表1 |
|
図表2 |
|
図表3 |
|
図表4 |
|
カテゴリ |
かんしょ
乾燥
飼料設計
飼料用米
飼料用作物
低コスト
肉牛
ばら
|