タイトル |
生活支援に関わるコミュニティ・ビジネスの成立条件 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2007~2009 |
研究担当者 |
唐崎卓也
安中誠司
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発行年度 |
2009 |
要約 |
生活支援に関わるコミュニティ・ビジネスの持続的な運営を可能にする条件には、住民、行政などの関係者間の連携を担う中間支援機能とその人材、サービスの利用者である住民の初期段階からの参加と、それを可能にする地縁型自治組織の関与が挙げられる。
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キーワード |
コミュニティ・ビジネス、生活支援、中間支援組織、地縁型自治組織
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背景・ねらい |
過疎・高齢化が進行する農村地域において、地域の生活に関する問題解決に向け、ビジネス手法を用いて生活サービスの提供を試みるコミュニティ・ビジネス(以下CB)への関心と期待が高まっている。そこで、住民が主体となって生活サービスを事業化しているCBを対象に、様々なサービス分野の代表的な事例の調査をもとに、運営組織の立ち上げと持続的な運営のための条件を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 国内の農村地域には生活支援に関わるサービスを提供するCBが成立し、大きく5つの事業分野がみられる(表1)。起業の契機の多くは、それまで民間事業者や行政が提供してきた生活店舗や交通といった基礎的な生活サービスの撤退に対し、住民が主体となり、それらのサービスを事業化している。これらのCB成立の背景には、サービスの利用者である住民や、行政や関係組織等の各セクターの連携がみられる(図1)。
- CBの運営組織の立ち上げに必要な条件には、1)問題解決に向けた地域内での協議、2)運営主体の組織化、3)施設整備を含む初期費用の確保が挙げられる。また、持続的な事業運営を行うための条件として、1)収益や補助資金の確保、2)経営に関わる人材・情報の確保、3)サービス利用者である住民との連携が挙げられる。こうした条件を満たす上で、地縁型自治組織の関与がみられることに農村地域におけるCBの特徴がある。
- CBに関与する地縁型自治組織には、旧来の地縁組織(集落区会、自治会等)や、地域振興を目的として新たに組織された地域振興協議会やむらづくり委員会等がある。これらの地縁型自治組織は、組織の立ち上げに至るまでの地域の問題解決に向けた住民間での協議、運営組織の人材確保、住民出資や共有林などの共有資産の運用による資金確保といった資金、人材・情報面での中間支援的な機能を担っている(表2)。
- 地縁型自治組織には、そのまま運営主体となる(智頭町NPO法人新田むらづくり運営委員会)、あるいはむらづくり委員会の専門部会と運営組織が連携して事業運営を行う(京丹後市常吉むらづくり委員会)など、中間支援機能にとどまらず、CBの主体的な役割を果たす事例もみられる(図2)。
- CBの成立条件として、むらづくり委員会や地域振興協議会といった地域の課題解決型の組織や、全戸参加型のNPO法人組織による初期段階からの関与が有効である。このような住民が参加する組織は、行政による支援事業の導入のしやすさからみれば、活動目的が明確化され、公平性が確保されている点で有利であるといえる。
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成果の活用面・留意点 |
- 本成果は、住民が主体となってCBを起業するにあたり、組織の立ち上げや運営体制の整備を行う場面で活用できる。
- 運営組織としては、NPO法人が有力な組織形態であるが、営利事業に対する課税がなされ、また利潤のストックや配当ができないことで、ビジネスに対するインセンティブが弱いといった課題がみられる。これには課税優遇等の制度的な対応が望まれる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
経営管理
ストック
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