タイトル |
大規模地震動のリスクを考慮した老朽化フィルダムのLCC評価法 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所 |
研究期間 |
2007~2009 |
研究担当者 |
谷 茂
堀 俊和
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発行年度 |
2009 |
要約 |
大規模地震に対する老朽化フィルダムの安全性を確保するための耐震補強をする場合に、耐震補強対策の程度と地震リスクを考慮したライフサイクルコスト(LCC)の算定を行い、耐震補強対策の最適化が出来る。
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キーワード |
老朽化フィルダム、地震リスク、ライフサイクルコスト
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背景・ねらい |
近年、大規模地震に対する老朽化フィルダムの安全性の評価において、耐震補強対策の必要性、対策の合理性の説明が求められていること、仕様設計から性能設計へと移行していること等から、耐震補強する場合でも、耐震補強対策の程度と地震リスクを考慮したLCCの概念に基づく耐震補強対策の最適化が必要となる。本研究では耐震補強対策の最適化を行うために、地震リスク、地盤強度のばらつきを考慮したライフサイクルコスト(LCC)の算定を行う手順、算定方法をマニュアル化する。
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成果の内容・特徴 |
- 大規模地震動のリスクを考慮したLCC評価の手順は図1に、老朽化フィルダムのモデルは図2に示すとおりである。この際には地盤定数のバラツキ、地震ハザードの評価、及び氾濫解析による下流域の経済損失の算定を含む手順でLCC評価が可能である。
- 図3は初期の耐震補強対策で天端沈下量の限界値を50cm、対策費10億円で改修を行った場合と、何も補強しなかった場合の損害額の期待値を示したもので、45年程度で、ライフサイクルコストは補強した場合の方が小さくなることを示している。
- 提示した手順で大規模地震動のリスクを考慮した老朽化フィルダムのLCC評価を行えば、設計期間に応じた最適な改修対策が選定可能になる。
- 築造年代の古い農業用フィルダム(堤高H≧15mで1945年以前に築造されたもの)は全国に約644箇所あるとされている。これらの多くは、堤体が老朽化していて、設計基準が制定される前に築造されていることから、地震時の安定性が十分でないものもあることが想定される。特に、大規模地震の発生が予想されている地域に立地する場合には早急な耐震補強が求められ、本成果は改修対策をコスト的に最も合理的なものにすることが可能である。
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成果の活用面・留意点 |
- 本成果はLCCを算定する上で、地盤定数のバラツキ、性能目標等は仮定した1つの事例を示したものであり、実際の評価では適切なパラメータ、数値目標を決定しなければならないが、現時点では十分なデータがないため、今後、地盤定数のバラツキの基礎データの収集及び構造物ごとに具体的な性能目標を設定する必要がある。
- 地震ハザード曲線については、既存データを使用することを前提としている。
- フィルダムを事例として評価手順を示しているが、開水路等のLCC評価など他の構造物にも利用可能である。
- 本成果は複雑な評価手順をマニュアル形式で表現しており、実際の設計に携わる技術者に参考資料として活用されることが期待できる。
- 下流域の氾濫被害評価については、氾濫解析プログラムを別途に開発し、経済損失の評価についても経済損失評価方法を提案しており、これらを利用することが可能である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
コスト
評価法
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