「高距限界集落」の動向と地域活動参与調査結果に見る集落存続のための方策

タイトル 「高距限界集落」の動向と地域活動参与調査結果に見る集落存続のための方策
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
研究期間 2007~2009
研究担当者 山下裕作
関口正洋
発行年度 2009
要約 高距限界集落の殆どが現在でも活力を有しながら存続する。その事由は、地域の「村がら」を活かした自律的な住民活動による。そうした自律的な活動には、活動資源の「羅列」と「取り合わせ」により、住民自身の「段取り」を促すことが有効である。
キーワード 限界集落、住民活動、資源の羅列、取り合わせ、段取り
背景・ねらい 高度経済成長下においてその存続が危ぶまれ、1974年時点に「限界集落」とされていた長野県等の集落を追跡調査し、その動向と現状に至る要因を探り、その結果と他の中山間地域事例での調査経験を基に、集落存続のための方策を提示しようとするものである。
成果の内容・特徴
  1. 山口(1974)は「高距限界」(標高1000m以上、都市部より50km以上離れる「居住限界」。即ち厳しい条件不利地域)という地理上の概念を用い、中央高地地域を中心に88の集落を調査し、当時存続する59の集落について、高度経済成長下存続が危惧されるとした。しかし、農業集落の全てが現在でも存続、半数以上が戸数増加し、高齢化率50%以上の「限界化」が危惧される集落は3つに留まり、廃村化していた29集落においても8集落で再生の動きがあることが明らかになった(表1)。
  2. 88の高距限界集落は、その主たる生業の形態により、より多様に分類することができる(表2)。現存する集落は観光・休養・信仰・温泉集落が近代的観光地域として、また木地師・製炭集落が特産品生産地域として、時代の状況に応じ独自に対応して現存している。これは、集落固有の「村がら」(社会関係資本)を基礎として、特有の住民活動を展開してきた結果である。
  3. いわゆる「限界集落論」は、年齢構成を主な指標とした集落類型に、時系列的意味を付与した一つの学説であり、未だ学問的検討の余地があるが、行政や現実生活の様々な局面で「与件」扱いされるおそれがある(表3)。
  4. 地域生活は、衣食住、生産・生業、交通・交易、社会生活、信仰、民俗知識、民俗芸能、娯楽・遊戯、人生、年中行事、口頭伝承、民俗技術を構成する「羅列的」で多種多様な要素を、自律的な「段取り」をもって実践することで営まれる。外部からもたらされる「論理」は(例えば「限界集落論」)、地域に危機感を提起するものの、具体的な対処方法にはなりにくい。地域振興活動への参与調査でも、失敗事例には「論理」の要素が強く、成功した事例には調査者による活動資源(生活資源・知識・技術)の「羅列」と、「羅列」に意味をもたせる「取り合わせ」により、地域住民自らが「羅列」された事物を「段取り」して実践されている(表4)。地域振興活動への支援には、こうした地域住民の自律的「段取り」を促す「羅列」と「取り合わせ」が必要で、「論理」は特段必要とは言えない。
成果の活用面・留意点
  1. 地域の振興活動に取り組んでいる研究者・農村生活者・行政担当者に、集落の健全な未来を志向する情報として提供できる。
図表1 233998-1.png
図表2 233998-2.png
図表3 233998-3.png
図表4 233998-4.png
カテゴリ 中山間地域

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