タイトル |
北海道で晩生の稲発酵粗飼料・飼料米兼用水稲新品種候補系統「北海310号」 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター |
研究期間 |
2001~2009 |
研究担当者 |
清水博之
横上晴郁
松葉修一
黒木 慎
安東郁男
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発行年度 |
2009 |
要約 |
「北海310号」は北海道での出穂期が"晩生の晩"に属する粳種である。地上部乾物重収量が多く、強稈で耐倒伏性が強いため稲発酵粗飼料用として利用できる。粗玄米収量も多い。
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キーワード |
イネ、多収、耐倒伏性、稲発酵粗飼料
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背景・ねらい |
北海道初の飼料稲品種「きたあおば」は収量性は高いが、いもち病抵抗性、耐冷性、耐倒伏性が十分でないため栽培には注意が必要である。そこで、いもち病抵抗性、耐冷性、耐倒伏性が強く、より省力で安定多収を得られる飼料稲品種を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 水稲「北海310号」は、耐倒伏性中間母本「関東PL12」と極早生系統「北海289号」のF1に低温初期伸長性中間母本「北海PL8」との交雑後代より育成された(表1)。
- 移植栽培での出穂期は「きらら397」より7日、「きたあおば」より6日遅い"晩生の晩"、成熟期は「きらら397」より20日、「きたあおば」より15日遅い"極晩生"である(表1)。黄熟期は「きらら397」より16日、「きたあおば」より10日遅い(表1)。
- 移植栽培での稈長は「きらら397」より10cm長く、「きたあおば」より3cm短い。穂長は「きらら397」より長く、「きたあおば」並である。穂数は「きらら397」より少なく、「きたあおば」よりやや少ない。(表1)
- 移植栽培での冷害年(2009年)を含む粗玄米収量の平均は「きらら397」より35%、「きたあおば」より28%多い(表1)。
- 推定可消化養分総量(TDN)含量は59.0%で「きらら397」「きたあおば」と差はない。推定TDN収量は「きらら397」より24%、「きたあおば」より2%程度多収である。(表1)
- 穂ばらみ期耐冷性は「きらら397」「きたあおば」より強い"やや強~強"である(表1)。
- いもち病真性抵抗性遺伝子型は"Pia, Pii"と推定され、いもち病圃場抵抗性は葉いもち、穂いもちとも"やや強"で「きらら397」「きたあおば」より強い(表1)。
- 直播栽培での地上部乾物収量は「きらら397」より9%、「きたあおば」より6%多いが、粗玄米収量は「きらら397」より16%、「きたあおば」より20%少ない(表1)。
- 直播栽培での苗立率は「きらら397」「きたあおば」とほぼ同程度である(表1)。
- 耐倒伏性は"強"で「きらら397」「きたあおば」より強く(表1)、直播栽培での転び型倒伏抵抗性も「きらら397」「きたあおば」より強い(図1)。
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成果の活用面・留意点 |
- 本系統の普及の可能性を明らかにする目的で大規模な試作を行う必要があるので、権利確保のための品種登録出願を行う。
- 直播栽培の場合、本品種の稲発酵粗飼料用の収穫は全ての食用米収穫完了後に行うことができるなど、熟期が遅いので収穫作業において他品種との競合を回避できる。
- 北海道での直播栽培では成熟期に達せず玄米収量が少ないので、飼料米や米粉原料米目的には適さない。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
いもち病
直播栽培
飼料用作物
新品種
水稲
抵抗性
抵抗性遺伝子
凍害
品種
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