タイトル |
飼料用水稲大麦二毛作における牛糞堆肥の窒素肥効と窒素溶脱に影響する要因 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター |
研究期間 |
2006~2009 |
研究担当者 |
原 嘉隆
土屋一成
増田欣也
中野恵子
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発行年度 |
2009 |
要約 |
水稲作での牛糞堆肥の窒素肥効は腐熟が進んだ堆肥や早期の施用で低下するが、大麦作ではあまり低下しない。両作とも施用後に鋤込まないと窒素の肥効が低下する。窒素の残効は大麦作で低く水稲作で高い。二毛作水田で牛糞堆肥施用による窒素溶脱は少ない。
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キーワード |
二毛作水田、飼料、イネ、オオムギ、牛糞堆肥、腐熟度、施用時期、窒素溶脱
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背景・ねらい |
近年、水田の有効活用が奨励され、九州では温暖な気候を活かして水田における水稲と大麦の二毛作栽培で得られる地上部全てを粗飼料として利用する期待が高まっている。その場合、畜産との連携が容易であるため畜糞堆肥が水田に多量施用されやすく、環境への負荷が懸念される。堆肥の肥料的効果が高ければ施用量を減らせるので、環境への負荷を抑制できる。そこで、畜糞堆肥の効率的な利用を図るため、飼料用の水稲と大麦の二毛作水田において、堆肥中の養分のうち作物生育にとって相対的に不足する窒素に関して、牛糞堆肥の肥効や残効および直接的な環境負荷となる窒素溶脱に影響する要因を調べる。
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成果の内容・特徴 |
- 水稲作では堆肥施用から代かきまでの期間が長いほど堆肥中窒素の肥効が低くなるが、大麦作では播種前2週間程度であれば早めに施用しても肥効は低下しない(図1)。
- 堆肥を施用後、鋤込みをせずに土壌表面に放置すると、水稲作前の春施用でも大麦作前の秋施用でも、堆肥中窒素の肥効が低下する(図2)。
- 堆肥を秋に施用したとき、腐熟度が異なっても1作目における堆肥中窒素の肥効に大きな差異はないが、春施用では腐熟度が高いほど堆肥中窒素の肥効が低くなる(図3)。
- 堆肥を春または秋のいずれに施用しても、直後の1作目における堆肥中窒素の肥効に対して2作目以降における残効は相対的に小さい(図3)。また、春施用でも秋施用でも、2作目以降の残効は夏作の水稲に比べて冬作の大麦で小さい。
- 秋に堆肥施用して冬作をしないと冬季の窒素溶脱が増えるが、大麦を栽培する場合や春に堆肥施用して水稲を栽培した場合、堆肥の腐熟度にかかわらず冬季の窒素溶脱は増えず(図4)、二毛作水田では堆肥施用による窒素溶脱の増加は小さい。
- 以上から、大麦に対する秋施用では堆肥の腐熟度や施用時期による影響が比較的小さいのに対し、水稲に対する春施用ではこれらの影響が大きいので、牛糞堆肥を肥料代替として活用するためには、一次発酵後の堆肥を栽培間近に施用することが望ましい。またいずれの時期でも牛糞堆肥の施用後はすぐに鋤込むことが重要である。
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成果の活用面・留意点 |
- 牛糞堆肥を肥料代替として飼料用の水稲や大麦を栽培する水田において、牛糞堆肥を窒素肥効が低い条件で多量施用しないための知見として活用できる。
- 高温となる一次発酵を終了していない堆肥(発熱が終了していない堆肥)は雑草種子の生存や病虫害伝染の懸念があるため、使用しない。
- 福岡県筑後市の二毛作水田(灰色低地土、作土深は約18cm、CECは約20me/100g乾土)で、牛糞オガクズ堆肥(付表参考)を施用し、飼料用水稲「タチアオバ」(5月下旬移植~10月中旬収穫)と食糧用大麦「ニシノチカラ」(11月中旬播種~4月下旬収穫)を栽培し、黄熟期に地上部全てを収穫した結果である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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カテゴリ |
肥料
病害虫
大麦
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播種
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