久住高原に見られる強酸性の非アロフェン質黒ボク土

タイトル 久住高原に見られる強酸性の非アロフェン質黒ボク土
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター
研究期間 2006~2009
研究担当者 久保寺秀夫
増田泰久
小路 敦
発行年度 2009
要約 久住高原に見られる強酸性の黒ボク土は、多腐植質土層の上部が特に酸性が強い。この土層は中九州に広く分布するアロフェン質黒ボク土と粘土鉱物が異なり、結晶性粘土鉱物に富み強酸性の交換基を持つ非アロフェン質の黒ボク土層である。
キーワード 黒ボク土、強酸性、非アロフェン質、久住高原
背景・ねらい 中九州~南九州の黒ボク土は、非晶質粘土鉱物のアロフェンやイモゴライトを主要な粘土鉱物とし、通常は強酸性化しないアロフェン質黒ボク土である。しかし久住高原にはpH(H2O)が5.0を下回る強酸性の黒ボク土が見られる。この強酸性黒ボク土の土壌管理に資するため、強酸性の原因と、強酸性を示す土層の積層状況を室内分析(一般理化学性および粘土鉱物)と土壌断面調査により解明する。
成果の内容・特徴
  1. 久住高原内の草地で調査した断面は6層位に分けられる(図1)。深さ100cmまでの5層位は黒色の多腐植質土層で、うち50~72cmの部分は褐色の風化礫(段原降下スコリア)を含んでいる。100cm以下は褐色の風化火山灰層(アカホヤ)である。
  2. 深さ36cmまでのAp層とA1層はpH(H2O)が4.4、交換酸度Y1が13.5以上と、36cm以下の土層に比べて酸性が強い(図1)。粘土鉱物組成は、36cmまでは酸性シュウ酸塩可溶のケイ素(Sio)とアルミニウム(Alo)が少なく、ピロリン酸塩可溶のアルミニウム(Alp)が多い。この結果は、アロフェン・イモゴライトが少なく腐植結合態のアルミニウムが多い、非アロフェン質黒ボク土の特徴を示している。X線回折結果でも結晶性粘土鉱物(2:1-2:1:1中間種、カオリン鉱物、雲母鉱物が主)のピークが明瞭に表れている(図2)。36cm以下はpH(H2O)が5.0以上、Y1が1.2以下、粘土鉱物はアロフェン・イモゴライトを主体とするアロフェン質の黒ボク土層である。
  3. 周辺の林内の土壌断面でも、断面の層序と各土層の酸性および粘土鉱物組成は同じ傾向を示し、厚い多腐植質土層の上部が非アロフェン質、下部(段原降下スコリア層を含む)がアロフェン質という層序の土壌は久住高原に一定の広がりを持って分布する(図3)。非アロフェン質の土層(交換基が強酸性の性質を持つ)は一般に酸性が強い土層であり、その存在が久住高原の黒ボク土の強酸性の原因である。
成果の活用面・留意点
  1. 久住地域における非アロフェン質黒ボク土の存在を、断面調査と粘土鉱物分析で示した報告は今までない。土壌管理上の基礎的な資料とする。
  2. 土壌管理の上で、非アロフェン質黒ボク土は酸性矯正の必要性に加えて、リン酸固定能の高さや塩基が欠乏しやすいなど、アロフェン質黒ボク土と共通した化学性の問題も有することに留意する。
図表1 234157-1.png
図表2 234157-2.png
図表3 234157-3.png
カテゴリ 肥料

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