オオムギの閉花性遺伝子の発見と機能解明

タイトル オオムギの閉花性遺伝子の発見と機能解明
担当機関 (独)農業生物資源研究所
研究期間 2008~2009
研究担当者 Sudha K. Nair
Ning Wang
Yerlan Turuspekov
Mohammad Pourkheirandish
Suphawat Sinsuwongwat
Guoxiong Chen
Mohammad Sameri
田切明美
長村吉晃
松本 隆
小松田隆夫
発行年度 2009
要約 オオムギの赤かび病抵抗性向上に有効な閉花遺伝子の同定に成功し、開花に必須な遺伝子Cly1の中の1塩基の変異により閉花性になることを明らかにした。また、この変異により、マイクロRNAによる切断が起らなくなり、Cly1の機能が維持されることが閉花性の原因となっていることを明らかにした。
キーワード 閉花性、マイクロRNA、スモールRNA、鱗被、転写因子、AP2
背景・ねらい イネ、コムギ、オオムギは同一の花に雄しべと雌しべを生じ、それが自家受粉することにより種子をつける自家受粉性作物である。これらの花は開花して雄しべを外部に出して受粉するのが一般的であるが、花の内部で自分の花粉で自家受粉が可能であるため結実のためには開花を必ずしも必要としない。オオムギには開花せず受粉する閉花受粉性品種が存在する。近年オオムギの閉花受粉性はオオムギの赤かび病の抵抗性向上に有効であることが示され、閉花受粉性の導入は感染防止にとってきわめて有効な手段であることが明らかとなってきた。本研究では、オオムギの閉花性の原因となっている遺伝子を同定し、その機能を明らかにすることを目的とした。
成果の内容・特徴
  1. 開花性オオムギと閉花性オオムギには鱗被の大きさにはっきりとした違いがある。開花性オオムギの鱗被は受粉時の急速な吸水によってふくらみ、内外頴を外へ押し広げ、そのため頴花が開く。閉花性オオムギの鱗被は形態形成が不十分でこのような機能がない(図1)。
  2. 開花性オオムギ品種と閉花性オオムギ品種の雑種F2集団を使い、閉花性遺伝子cly1をマップベース法で単離し、AP2ドメインをもつ転写因子HvAP2をコードすることを明らかにした。(図2)。
  3. 開花性と閉花性の品種では塩基の違いが一か所だけ存在した(図2)。この塩基の違う箇所はmiR172というマイクロRNAの一種によって切断を受ける部分で、開花性品種の遺伝子(Cly1.a)のmRNAだけが切断を受け、開花性になると考えられる。一方、閉花性品種の遺伝子(cly1.b)では mRNAが切断されないため、HvAP2が翻訳され、閉花性となる。
成果の活用面・留意点
  1. 遺伝子がCly1.a型かcly1.b型(図2)かを調べることによって、閉花性遺伝子を有するオオムギ品種を効率良く育成することが可能になる。閉花性遺伝子を有した品種は開花時に感染する可能性がなく赤カビ病に強いことが知られており、閉花性遺伝子を活用した赤カビ病抵抗品種の開発が期待される。
  2. イネ科植物の花が開く際の機械的な仕組みを解く手がかりが得られ、完全な閉花性品種が存在しないコムギやイネにおいてもオオムギと同様の閉花性品種を作出するために役立つと期待される。
図表1 234179-1.jpg
図表2 234179-2.jpg
図表3 234179-3.png
図表4 234179-4.png
カテゴリ 大麦 受粉 抵抗性 品種

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