タイトル | ディルドリンを好気的に分解する糸状菌の単離 |
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担当機関 | (独)農業環境技術研究所 |
研究担当者 |
髙木和広 片岡良太 |
発行年度 | 2009 |
要約 | ディルドリンを好気的に分解する糸状菌をエンドスルファン連用畑土壌から単離しました。この菌は、Mucor racemosusに近縁であり、土壌中に残留するディルドリンに対して高い分解能を発揮するため、農耕地のバイオレメディエーション(生物的環境修復)へ応用が期待出来ます。 |
背景・ねらい | ディルドリンは残留性有機汚染物質条約(2001年5月に採択された国際条約)の対象物質ですが、これを好気的条件で効率良く分解出来る微生物は報告されていません。そのため、環境中に長期間残留しているディルドリンのバイオレメディエーション(生物的環境修復)技術の開発が進んでいません。そこで、ディルドリンを分解する微生物を探索し、その分解能について検討しました。 |
成果の内容・特徴 | ディルドリンと類似の構造を持つ殺虫剤エンドスルファンを連用したさつまいも畑土壌から、ディルドリンを好気的に分解する糸状菌(菌株名;DDF株)を発見しました。本菌はInternal transcribed spacer (ITS)領域の塩基配列からMucor racemosusに近縁であることが明らかになりました(図1)。 この菌は、液体培地中に添加したディルドリン(13.2µM)を培養10日間で最大96%分解しました(図2左)。また、ディルドリンの分解に伴い、代謝物としてアルドリントランスジオールが検出されました(図2右)。初期基質としてアルドリントランスジオールを添加すると速やかに消失することから、この菌はアルドリントランスジオールを更に分解していると考えられます。 ディルドリンを添加した模擬汚染土壌(5mg/kg-乾土)に、DDF株を培養したふすまを6%(w/w)混和し、土壌水分を50%(w/w)に調節したところ、培養7日間で土壌中のディルドリンは検出限界(0.05mg/kg-乾土)以下まで減少しました(図3)。 このように、Mucor racemosus DDF株は、ディルドリンを好気的にほぼ100%分解できる糸状菌として世界で始めて単離された菌株であり、ディルドリン残留土壌でのバイオレメディエーションへの適用に大変有望な菌株として期待されます。 |
成果の活用面・留意点 | 本研究は農林水産省委託プロジェクト研究費「生産工程POPs」による成果です。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |