バイオマスの糖化に利用できる新規なキシラン分解酵素複合体

タイトル バイオマスの糖化に利用できる新規なキシラン分解酵素複合体
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2006~2010
研究担当者 小杉昭彦
Patthra Pason
森 隆
発行年度 2009
要約 通性嫌気性細菌Paenibacillus curdlanolyticus B-6は、強力なキシラン分解活性を有する新規の酵素複合体(約1,450kDa)を生成する。この複合体は、骨格蛋白質(280kDa, 260kDa)及び4種類のキシラナーゼ活性を有するサブユニットにより構成され、キシランを含むバイオマスの糖化に利用できる。
キーワード 酵素複合体、キシラナーゼ、キシラン分解酵素、バイオマス、ザイラノソーム
背景・ねらい 稲ワラ等のセルロース系バイオマスの酵素糖化において、主要構成成分であるセルロース、ヘミセルロース(特にキシラン)を如何に効率的に分解できるかは重要な技術課題である。パイナップル残渣処理槽から分離された通性嫌気性細菌Paenibacillus curdlanolyticus B-6は、キシラン高分解活性を持つが、その詳細は不明であった。本菌からヘミセルラーゼ高活性画分を精製、遺伝子解析した結果、キシラン分解酵素複合体を構成し、構造的に新規な酵素複合体であることを見出した。今迄、一部の嫌気性微生物のみセルロース・ヘミセルロース分解に関する酵素複合体(セルロソーム)の存在が認められていたが、通性嫌気性細菌でも新規な酵素複合体(ザイラノソームと仮称)を生産できることを確認した。
成果の内容・特徴
  1. パイナップル残渣処理槽より分離された通性嫌気性菌P. curdlanolyticus B-6は高いヘミセルロース分解能を持ち、その活性は高分子量画分に存在する(図1、PeakⅠ-Ⅲ)。
  2. ゲルろ過により分取した約1,450kDaの画分を、イオン交換体および疎水性クロマトグラフィーにより精製しキシラン分解活性を有する巨大タンパク質を単離した(表)。
  3. この巨大タンパク質はNative-PAGEで単一バンドを与えるがSDS-PAGEでは6種のバンドを形成し、活性染色の結果から、約280kDa(S1)及び260kDa(S2)の骨格蛋白質とキシラナーゼ活性を示す3種類のサブユニット(S7, S8, S11)及び、エンドグルカナーゼサブユニット(S10)により、構成される酵素複合体であることが明らかになった(図2)。S7及びS8サブユニットはキシラナーゼだけでなくエンドグルカナーゼ活性も示す。
  4. 主要な40kDaのキシラナーゼサブユニットS11(Xyn11A;GenBank FJ956758)は、糖質分解酵素(GH)ファミリー11、リンカー様アミノ酸配列、及び糖質結合モジュール(CBM)ファミリー36を含む2つの機能ドメインがあり、セルロソームサブユニットに必須のドックリン類似構造は認められなかった(図3)。
  5. 以上のことから、通性嫌気性細菌P. curdlanolyticus B-6はセルロソームとは異なる高いキシラン分解活性を有する新規の酵素複合体(ザイラノソームと仮称)を生産することが明らかである。
成果の活用面・留意点
  1. キシランを基質にした場合、本菌のザイラノソームにより得られる最終産物はキシロビオース及びキシロオリゴ糖であるため、機能性キシロオリゴ糖として利用することができる。
  2. Clostridium属細菌が生産するセルロソームと併用することによって、キシランを多量に含むバイオマスの効率的糖化が実現できる可能性がある。
図表1 234231-1.gif
図表2 234231-2.gif
図表3 234231-3.png
図表4 234231-4.png
カテゴリ 機能性 くり パイナップル

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