タイトル | 北海道に来遊するトドの起源とその来遊状況の変動要因を探る |
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担当機関 | (独)水産総合研究センター 北海道区水産研究所 |
研究期間 | 2004 |
研究担当者 |
服部 薫 磯野岳臣 山村織生 |
発行年度 | 2009 |
要約 | 北海道に来遊するトドの遺伝学解析と標識個体の追跡および再確認を行った結果、アジア系群の中でもオホーツク海北部や千島列島の繁殖場を起源とし、サハリンとの往来もあることを確認した。また繁殖期にロシアと共同調査を行い、サハリン・チュレニー島の個体数増加と繁殖期のサハリン南部上陸場の利用実態に関する知見を得た。 |
背景・ねらい | 近年、トドの回遊経路は日本海側に偏っており、漁業被害も日本海側で甚大である。その要因として、日本海に最も近い繁殖場であるサハリン・チュレニー島での個体数増加や、南部のモネロン島での繁殖確認など最近年の動向が注目される。トドの資源管理においては、来遊数推定精度の向上に加え、来遊起源であるロシアの資源動向、分布の把握および系群構造の解析が重要な課題となっている。そこで本研究は、系群構造に関する知見を蓄積し、トドの資源管理への貢献を目的とし、(1)遺伝学的手法による系群解析、(2)サハリンにおける分布および繁殖状況の把握、(3)衛星標識装着個体の追跡、(4)標識-再確認調査を実施した。 |
成果の内容・特徴 | 集団遺伝学的解析により、北海道来遊個体はアジア系群の中でも特にオホーツクおよび千島列島集団と遺伝的に近縁であることが明らかとなった(図1)。日本海沿岸の上陸場で継続的に行った標識個体の再確認調査により、来遊個体は千島列島(図2; A~E)およびオホーツク北部(図2;F、G)の繁殖場で出生したことが明らかとなった。猿払村で行った衛星標識による追跡調査では、来遊個体は越冬期間中必ずしも北海道に滞留せず、サハリン南部の海域を往来すること、繁殖期には一部はサハリン・チュレニー島に滞在し、また一部は宗谷海峡およびサハリン南部に滞在することが明らかとなった(図3)。2009年にはロシア科学アカデミーと共同で繁殖場調査を行い、サハリン南部の7つの上陸場で2,007頭(新生子11頭を含む)、繁殖場であるチュレニー島で最大2,043頭(新生子678頭を含む)を観察し、新生子数が年々増加傾向にあることを確認した(図4)。またチュレニー島では初めて新生子175頭への標識が行われた(図5)。 |
成果の活用面・留意点 |
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図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
図表5 | ![]() |
カテゴリ | 繁殖性改善 |