遺伝子解析でわかったホシガレイ地域群間の大きな遺伝的違い

タイトル 遺伝子解析でわかったホシガレイ地域群間の大きな遺伝的違い
担当機関 (独)水産総合研究センター 東北区水産研究所
研究期間 2007~2011
研究担当者 関野正志
研究協力:宮城水技セ
研究協力:福島水試
研究協力:宮古栽培セ
研究協力:西海区水研
発行年度 2009
要約 遺伝的多様性を考慮したホシガレイの放流技術開発のため、本種の天然集団についてDNA解析を行い、集団間の遺伝的違いを調べた。その結果、地域間で遺伝的違いが認められ、生息域が地理的に近い集団間でも顕著な遺伝的違いがあることが分かった。本成果から、本種天然集団の遺伝的保全のためには、分布地域ごとに種苗生産・放流を行う必要がある。
背景・ねらい ホシガレイでは、種苗生産技術の向上により、近年種苗放流量が増加している。本種は限られた地域にしか生息せず、元来資源量は少ない。このため天然集団の遺伝的地域特性は、人工種苗の移植・放流の影響を強く受ける可能性がある(遺伝的リスク)。そこでDNA解析により天然集団の地域間の遺伝的違いを調べ、本種の遺伝的多様性・地域特性を損なわない移植・放流方法の開発を目的とした。
成果の内容・特徴
  • 主要生息域の東北地域(三陸・仙台湾・福島)、伊勢湾、瀬戸内海、橘湾(長崎県)および黄海(中国山東省)から得られたホシガレイについて、マイクロサテライトDNAマーカー(29個)とミトコンドリアDNA(mtDNA)3領域の塩基配列に基づくDNA解析注1)を行った。
  • 東北・瀬戸内海・橘湾間の遺伝的違いは大きく(図1)、橘湾と瀬戸内海間は、地理的には近いが集団間の違いは非常に大きく、共通mtDNAハプロタイプ(mtDNAの種類)がほとんど検出されなかった(図2)。本種で見られた大きな遺伝的違いは、日本沿岸の大型海産魚では珍しいケースである。
  • マイクロサテライト解析だけでは分かりにくい遺伝的違いを、さらにmtDNA解析を行うことにより明らかにした(図1)。mtDNA解析において、調節領域(集団解析に多用される領域)だけでは検出不可能な違いが、解析領域を広げることにより明らかになった。
注1)マイクロサテライトDNAは、細胞核DNA上にある特徴的な領域。mtDNAは細胞内ミトコンドリアにあるDNA。マイクロサテライトDNAは両親から子供に遺伝するが、mtDNAは基本的に母親からしか伝わらない。この遺伝様式の違いから、それぞれDNAマーカーとして長所・短所がある。
成果の活用面・留意点
  • ホシガレイが生息している地域間で大きな遺伝的違いが認められたことから、種苗放流に伴う遺伝的リスク低減のためには、各生息域の天然親魚を用いて種苗を生産し、その地域へ放流することが望ましい。
  • DNA解析法や調べるDNA領域によって、集団間の遺伝的違いを著しく過小評価する危険があることが分かった。他の生物における集団遺伝解析でも、解析法の吟味が重要であることを示唆した。
図表1 234251-1.png
図表2 234251-2.png
カテゴリ DNAマーカー

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