硫化物量を指標とする養殖漁場環境の評価手法

タイトル 硫化物量を指標とする養殖漁場環境の評価手法
担当機関 愛媛県農林水産研究所
研究期間 2000~2007
研究担当者 小泉喜嗣
谷川貴之
山下亜純
竹中彰一
発行年度 2009
要約 給餌養殖では過剰な有機物汚染が漁場環境の悪化をもたらし、有害赤潮や魚病の蔓延を助長する“自家汚染”が問題視される。生産基盤である海の環境悪化を阻止するため、表層堆積物とベントスデータを用いて、“硫化物量を指標とした養殖漁場環境の評価”を試みた。硫化物は測定が容易であり、生産者自らが実践可能な“環境に優しい持続的な養殖生産”への転換が期待される。
背景・ねらい 1999年5月に公布、施行された「持続的養殖生産確保法」の効果的な運用を目的として、西日本沿海3県(和歌山県・大分県・愛媛県)では、「底生生物による漁場の健全性を評価すること」によって、「持続的な養殖生産が可能な硫化物量」の値を求めることを試みた。
成果の内容・特徴 「持続的な養殖生産が可能な硫化物量」の値を求める決定方法を図1に模式的に示した。西日本沿海3県では、実測値に基づいてこの決定方法を検証した。堆積物中の有機物含量(=全窒素量)と底生生物現存量の対応関係(図2)では、図1上段に模式的に示した関係と同様、堆積物中の全窒素量が増加するにしたがって底生生物現存量は増加するが、一定濃度以上になると現存量が減少することが判った。得られた回帰式は上に凸の2次方程式であり、その頂点のx座標ならびにx軸との交点を求めるとそれぞれ1.09mg/g、4.14mg/gの全窒素量が得られた。前者の値は底生生物が健全に増殖しその生物量を増加させることができる堆積物中の有機物含量の限界値であり、後者は底生生物がもはやこれ以上は増殖できない限界値となる。堆積物中の全窒素量と汚染指標として選択した硫化物量の対応関係(図3)では、両者の間に有意な相関関係(p<0.01)が認められており、図1に示した模式的な関係は西日本沿海3県の実際の養殖漁場でも成立する関係であることが明らかとなった。図2より求めた全窒素量を図3から得られた1次方程式を用いて、分析が容易な硫化物量に換算すると、全窒素1.09mg/g、4.14mg/gはそれぞれ硫化物量として0.24mg/g(≒0.2)、1.02mg/g(≒1.0)となった。したがって、図1下段で示した区分1と区分2の境界値(=底生生物が健全な状態で生物量を増加させることができる硫化物量の限界値)は0.2mg/gとなり、区分3と区分4の境界値(=底生生物がもはや生存できない硫化物量の限界値)は1.0mg/gとなった。以上のような考え方と実測値に基づく解析によって、“硫化物量を指標とした養殖漁場環境の評価”のための漁場区分と硫化物量の基準値(表1)を提案した。
成果の活用面・留意点 提案した硫化物量の基準値は現状の漁場を評価する診断基準であり、必ずしも絶対的なものではないことに注意すること。
図表1 234274-1.png
図表2 234274-2.png
図表3 234274-3.png
図表4 234274-4.png
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