クロマグロの産卵場の推定と海洋環境の特徴

タイトル クロマグロの産卵場の推定と海洋環境の特徴
担当機関 (独)水産総合研究センター 中央水産研究所
研究期間 2007~2009
研究担当者 増島雅親
稲掛伝三
瀬川恭平
岡崎 誠
発行年度 2009
要約 天然海域におけるクロマグロ仔魚分布から産卵場を推定する手法を開発し、平成18年度の仔魚調査結果に適用した。南西諸島周辺に産卵場が形成されたことを把握し、さらに産卵場の水温、渦度等の海洋環境特性を明らかにした。
背景・ねらい 太平洋クロマグロは、太平洋の温帯域を中心に広域に分布するが、産卵場は沖縄南部の海域を中心とした、比較的狭い海域を利用している。そこでふ化した仔魚は2~3ヶ月後には,高知県沖や長崎県沖の海域に来遊し、この加入資源量がその年の年級群豊度を左右している。すなわち、太平洋クロマグロは、産卵場から日本周辺海域までの初期減耗・初期生残に応じて、その後の資源量が定まるものと考えられている。適切な資源評価と管理のためには、産卵場から日本周辺海域まで来遊するまでの減耗過程の解明が重要なポイントである。本研究ではその起点となる産卵場を特定し、産卵場の環境特性を把握することを目的とする。
成果の内容・特徴 海況予報システムFRA-JCOPEを利用した粒子追跡法を用いて、クロマグロ仔魚位置(Tanaka et al. 2006)からその日齢相当の時間分を時間の逆方向に追跡することにより、仔魚が産卵された位置、すなわち産卵場を推定する方法を開発した。仔魚の日齢は成長曲線(図1右; Satoh et al. 2008, submitting)を用いて体長から推定した。俊鷹丸の平成18年度第2次航海で得られた仔魚採集結果に適用し(図2左)、逆追跡実験を行った。その結果、本調査で得られた仔魚は採集位置周辺で産卵された可能性が高く、また、より南西諸島周辺で産卵された可能性もある(図2右)ことがわかった。統計的な解析により、推定産卵場の海洋環境の特性を調べたところ、水温25.4度、渦度1.02×10-5 1/s、塩分34.98psu、クロロフィル濃度0.41mg/m3に特性値を持つことがわかった。この結果は、水温26度で高い孵化率を獲得するという、養殖分野や実験で指摘されている産卵温度特性や過去の仔魚採集地点の平均水温とも合致している。南西諸島の南東海域は海洋中規模渦が季節スケールで西進してくる海域として知られており、渦度に特性値が見出されたことはクロマグロの産卵と中規模渦が密接に関連していることを表す重要な結果である。
成果の活用面・留意点
  • 太平洋クロマグロの加入量変動機構の解明と加入過程を明らかにする上で端緒となる成果である。
  • 地球温暖化の太平洋クロマグロへの影響を予測するために重要な知見となる。
  • クロマグロの産卵目撃例、つまり、産卵場位置の直接観測データは数件しかなく、今回の推定結果の検証を含め、天然のクロマグロ産卵の観測は今後の大きな課題として依然として残る。今後、さらに事例を蓄積し、産卵場形成機構の解明を目指す必要がある。
図表1 234308-1.png
図表2 234308-2.png
カテゴリ 成長曲線

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